7月にはドイツでも難民やイスラム過激思想の持ち主が関与するテロ事件が発生したことを受け、首相の支持率は50%を割り込み、首相就任以降で最低圏にある。こうしたなか、首相の難民政策をめぐっては姉妹政党や連立パートナーの一部からも不満の声が上がっている。
CDUの姉妹政党でバイエルン州だけで活動する「キリスト教社会同盟(CSU)」のゼーホーファー党首(バイエルン州首相)は、難民の受け入れ数に制限を設けることなどを強く要求しているほか(ドイツの東南端に位置するバイエルン州はオーストリアからドイツへの難民の主要な流入ルート)、メルケル政権に連立パートナーとして加わっている中道左派の「社会民主党(SPD)」のガブリエル党首(副首相兼経済・エネルギー相)も最近、首相の難民政策を批判した。
今回の州議会選挙の結果により、AfDは16の連邦州の9つで議席を獲得した。債務危機時のギリシャ救済などに反対し、ドイツの欧州連合(EU)からの離脱を掲げて2013年に創設されたAfDは、結党直後の前回連邦議会選挙では、議席獲得に必要な5%の獲得票率にわずかに届かず(4.7%)、現在、連邦議会に議席を有していない。だが、各種の世論調査で10%台前半の支持を獲得し、来年秋の連邦議会選挙では第3党への躍進が予想されている。
このままの勢いを続ければ、二大政党の一角を占め、メルケル政権の連立パートナーであるSPDに肉薄しかねない。ナチスへの反省から排外主義的な右派政党がこれまで国民的な支持を得ることがなかったドイツでも、難民問題をきっかけに反EU政党が着実に支持を伸ばしている。
<首相続投反対50%の世論調査結果も>
今後、来年の連邦議会選挙までに、ドイツで新たなテロ事件が発生したり、難民危機の混迷が深まれば、AfDにさらなる追い風が吹くことになる。
3月に新たな難民危機対応が始まって以降、トルコからギリシャに渡る難民の数は激減している。トルコは難民危機対応への協力と引き換えに、10月末までにトルコ国民のEU内でのビザなし渡航を要求している。
7月のクーデター未遂事件後、EU諸国がトルコのエルドアン大統領の強権的な政治手法に一段と苛立ちを強めたことを受け、トルコ側は難民危機対応での協力姿勢を取りやめる可能性を示唆してきた。今月2―3日に開かれたEUとトルコの外相会談で、トルコはひとまず協力継続を約束したが、今後も事態は流動的と言えそうだ。
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