[東京 5日] - ドイツの東北端・バルト海に面したメクレンブルク=フォアポンメルン州――。日本でめったに名前を聞くことのない、この旧東独の州で4日、州議会選挙が行われ、その結果にドイツ政界では激震が広がっている。
移民排斥や反イスラムを訴える右派のポピュリスト政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が20.8%の票を獲得し、メルケル首相が率いる中道右派「キリスト教民主同盟(CDU)」の19.0%を上回る支持を獲得したのだ(いずれも出口調査での暫定的な得票率)。
メクレンブルク=フォアポンメルン州は多数の自然保護区を抱え、16ある連邦州の中で最も人口密度が低い州だが、今や欧州に欠かすことのできないリーダーとなったメルケル首相が、1990年に連邦議会議員に初当選して以来、地盤としてきた州だ。お膝元での手痛い敗北で、党内でのメルケル首相の求心力が弱まりかねない。
今回の州議会選挙の最大の争点は、メルケル首相の難民危機対応だったと言われる。ほぼ1年前の8月31日、シリア難民の受け入れを表明したメルケル首相の「Wir shaffen das(我々ならできる)」という言葉に勇気づけられた難民が欧州に大挙して押し寄せた。ドイツには昨年1年間だけで100万人以上の難民が流入したが、人口約170万人のメクレンブルク=フォアポンメルン州は、このうち2万3000人余りを受け入れたに過ぎず、他の連邦州と比べて難民の流入数は圧倒的に少ない。
難民の影響が相対的に少なかった州での投票結果だけに、難民問題がいかにドイツの世論を動かしているかがうかがい知れる。AfDは今年3月に行なわれた3つの州議会選挙でも大きく躍進し、メルケル首相の難民危機対応や欧州中央銀行(ECB)の超低金利政策に対する不満票の受け皿となっている。
地元の地方選で敗北を喫したドイツのメルケル首相。来年には自身の首相としての4期目がかかっており、これがメルケル氏の「終わりの始まり」と指摘する声も上がっている。
<連立政権内部からも不満の声>
難民危機が深刻化する以前に70%前後に達したメルケル首相の支持率は、積極的な難民受け入れに対する世論の風当たりが強まるとともに急降下を続けている。
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