今、最も懸念されているのは韓進海運の営業網が壊滅することだ。法定管理の申請により国際的な信用が低下し、韓進海運の運航路線ネットワークは崩壊の兆しを見せている。同社が40年にわたり築き上げてきた貴重な資産が意味のないものになる事態に直面しているということだ。そうなれば、韓進海運の優良資産を韓国の現代商船に買い取らせ、事実上の合併効果を出すという政府の計画も水の泡となる。世界7位の韓国海運会社をみすみす失う結果になるのだ。
韓進海運の事態は、政府や官僚たちに果たして問題解決能力があるのかという疑いを抱かせる。海運産業に責任を負う海洋水産部(省に相当、以下同じ)は「構造調整は金融委員会がやること」と言って傍観しているばかりだ。その金融委員会は「韓進グループがさらなる自助策を出さなければ支援もできない」と突き放した。省庁間の調整を行い、政府としての対策を打ち出す立場にある柳一鎬(ユ・イルホ)経済副首相兼企画財政部長官の姿は見えない。こうした状況にもかかわらず、早急に非常ベルを鳴らすべきコントロールタワーもなかった。
官僚集団の事なかれ主義は昨日今日に始まったことではないが、昨今の状況は非常に深刻だ。韓進海運のことだけでなく、大気汚染問題や電気料金の累進制度をめぐる問題などでも、担当省庁は消極的な姿勢で責任回避するばかりだった。
一部では、構造調整を議論した西別館会議(非公開の経済金融点検会議)に対する国会の聴聞会が、官僚たちをさらに萎縮させているとの指摘もある。官僚の政策判断に過剰な政治的、司法的物差しを当てるのはもうやめるべきだ。政府と官僚集団は「最後の解決者」でなければならない。問題解決能力を失った政府がどうして必要だろうか。