リオデジャネイロ・パラリンピックが、日本時間のあした開幕する。

 義足で走り幅跳びに出場するドイツのレーム選手は、リオ五輪の金メダル記録を上回る記録を持つ。日本からは、7度目となる車いす陸上の永尾嘉章(よしふみ)選手ら約130選手が参加する。

 アスリートとして限界に挑む姿勢は五輪と何ら変わりない。厳しい練習で培った力を存分に発揮してほしい。

 残念なこともある。国家ぐるみでドーピングをしていたとして、ロシアの選手団は大会から締め出された。問題の背景にひそむ、五輪やパラリンピックを国威発揚の場ととらえる誤った考えと決別し、スポーツの本質である公平・平等を体現する祭典になることを期待したい。

 2020年は東京での開催となる。関心が高まるこの4年間は、障害の有無を超えて人々が一緒に活動する環境を整えていく良いチャンスだ。

 スポーツ界はすでに動き出している。

 たとえばサッカー。障害の内容によって七つに分かれている団体を束ねる全国組織が、4月に設立された。力を結集することで障害者サッカーの認知度をあげ、だれもが等しく競技を楽しめる社会をつくろうと、日本サッカー協会が支援した。ボールを扱うのに健常者と障害者の区別はないと、協会フットサル部門の技術幹部がブラインドサッカーのコーチに就任した。

 フェンシングでは昨年、全日本選手権と車いすの大会が同じ会場で同時に開かれた。五輪のトップ選手が練習する東京都北区のナショナルトレーニングセンターでは、車いす選手が健常者と技術を磨き合う。

 市民スポーツの場でも同じような光景が見られる。

 約1300人の会員が学校のグラウンドや体育館で汗を流す「高津総合型スポーツクラブSELF」(川崎市)は、3年前に障害者の受け入れを始めた。現在約30人が所属する。障害者クラスに健常者が参加することも、健常者のクラスで障害者が体を動かすこともできる。

 スタッフの一人は、最初のころはどう対応したらいいか分からず、戸惑ったという。

 しかし、同じ空間で、同じ時間を過ごすことにより、互いの理解は深まっていった。

 今回のパラリンピックを、ともに生きることの意義を肌で感じる機会にしたい。テレビ中継の枠も格段に増える。まずは選手の躍動に触れ、プレーを楽しもう。その先に明日の社会が描き出される。