中国と国際社会 協調路線で責任果たせ
中国・杭州で開かれた主要20カ国・地域(G20)首脳会議は、議長役の習近平(しゅうきんぺい)国家主席にとって内外に指導力を示す政治的な舞台だった。南シナ海問題など政治課題を封じ込める一方、経済底上げに向けた国際協調をうたう首脳宣言をまとめ、中国メディアは成功を強調している。
中国が指導力を発揮しようとすることは自然なことだが、政治課題を避けるようでは大国としての器量が問われる。会議後には再び強硬姿勢に戻るのではと懸念する声も根強い。外交、安全保障政策でも協調路線を進めることが信頼を得る道だ。
古都・杭州には2014年に北京で開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議と同じように青空が広がった。工場閉鎖や交通規制などで汚染を防ぎ、住民たちを市外に移動させたのだ。
最高指導者がホストを務める国際会議は中国では最重要イベントであり、失敗が許されない。テロ警戒に厳しい規制が敷かれ、世界遺産の西湖では各国指導者に向けた派手なパフォーマンスが繰り広げられた。
会議直前には外交面でも柔軟な姿勢が垣間見られた。8月下旬に国連安全保障理事会で北朝鮮の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の発射を非難する声明の発表に合意したのがその例だ。沖縄県の尖閣諸島周辺に接近する海警局の公船も減った。
問題は青空と同様にG20会議限りの対応という疑いが消えないことだ。フィリピンと中国が領有権を争う南シナ海のスカボロー礁には中国船が集結し、フィリピンは埋め立てが狙いではと警戒を強めている。
中国は国際秩序に挑戦する意図はないと表明する一方で、米国が主導する現行秩序は調整や改変が必要だと主張している。しかし、南シナ海、東シナ海でみられるように力を誇示して現状を変えるつもりなら周辺諸国には受け入れられない。
南シナ海での行動は中国の世界観を見定める試金石ともいえる。人工島建設にみられる強硬路線に日米や周辺諸国が懸念を高めたのは当然だろう。中国の権益主張を否定する仲裁裁判決を受け、これまでのやり方を見直すかがカギになる。
会議に合わせ、北朝鮮が弾道ミサイルの連続発射実験を行った。中国が北朝鮮の核開発阻止のための国際協調と、米韓のミサイル防衛反対のどちらに軸足を置くのか。揺さぶる狙いもあるのではないか。
6日からはラオスで東南アジア諸国連合(ASEAN)と日米中などの会議が始まった。習主席は杭州のG20会議を「再出発の新たな起点」と総括したが、中国にとっても国際社会との関係を見直す新たな起点にしてもらいたい。