温暖化パリ協定 年内発効の手続き急げ
地球温暖化防止に向けた新しい国際枠組み「パリ協定」の批准を、米国のオバマ大統領と中国の習近平国家主席が共同発表した。
世界各地で温暖化の影響と見られる異常気象が起きている。対策は待ったなしだ。世界の温室効果ガス排出量の4割を占める2大排出国の批准を契機に、各国も手続きを急ぎ、協定の年内発効を実現してほしい。
パリ協定は、昨年末の国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)で採択された。産業革命前からの平均気温上昇を2度未満に抑えるため、各国は対策を策定して国連に提出し、5年ごとに見直す義務を負うことになった。
米中の首脳が中国での主要20カ国・地域(G20)首脳会議開催直前に批准を発表したのは、各国に批准を促すためだ。習国家主席には、G20議長国として「責任ある大国」を演出する狙いもあったろう。
一方、任期が残り4カ月余りとなったオバマ大統領は野党・共和党が多数派を占める議会の承認を回避し、大統領権限で批准を決めた。こだわったのは、年内の協定発効を自らの政治的遺産とすることだ。11月の米大統領選で、共和党候補のトランプ氏が、パリ協定への不参加を訴えていることが関係している。
協定は批准国が55カ国以上、批准国の温室効果ガスの排出量が世界の55%以上に達してから30日後に発効する。ただし、協定の規定で批准国は発効から4年間は脱退できない。年内発効なら、トランプ氏が当選しても、この規定に縛られる。
パリ協定の採択と前後して、温暖化対策に積極的な姿勢を示す世界的な企業が相次いでいる。中国が温室効果ガスの排出量取引を来年から全土で実施することを表明するなど、各国の政府レベルでも新たな取り組みが次々に始まっている。
パリ協定に先立つ温暖化対策の国際枠組みだった京都議定書では、採択から発効まで7年余りかかった。パリ協定が早期に発効すれば、世界各地で胎動する温暖化対策の熱気を保持し、対策を加速できる。
今後の焦点は、欧州連合(EU)やロシア、インド、日本など他の大口排出国・地域の動向に移る。
日本は世界の温室効果ガス排出量の3・8%を占める。日本の批准が協定発効の鍵を握るかもしれない。協定の詳細なルールづくりは今後、本格化する。国際交渉で発言権を得るためにも、政府は今秋の臨時国会で批准手続きをとるべきだ。
経済界には批准に慎重な意見もあるが、パリ協定発効を契機に技術革新を促し、低炭素社会の実現に向けて進んでいくことが、日本の国際競争力の向上にもつながるはずだ。