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強姦被害者を黙らせる日本 女性を抑圧する社会ほど、強姦事件の認知件数が少ないことを示すデータ

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男女不平等な社会が、強姦の告発を妨げている

続いて、それぞれの指数を強姦認知件数とともに見ていきましょう。

まず一人当たりGDPと強姦認知件数を見てみます。一人当たりGDP が高い国の方が(グラフの右に行けば行くほど)、そうでない国よりも強姦認知件数が高そうです(グラフの上に位置する)。日本は平均より低いので、ごちゃごちゃと固まっている左側の中にいます。

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強姦認知件数と家族制度の関連を見ていくと、女性に対して差別的な家族制度(夫婦同姓などもその一つ)がある国ほど強姦認知件数は少なくなっています。強姦に遭った娘に「犬に噛まれたと思って忘れなさい」と親が諭すのは日本のドラマなどでも出てくるシーンですが、ジェンダーについて保守的な社会では、娘の強姦は「娘の恥」「家族の恥」と捉えられる傾向があるので、この結果もそれと重なるものだと言えます。

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次に、強姦認知件数と女性の身体に対する抑圧の度合いの関連を見ていきます。興味深いことに、女性の身体に対する抑圧の度合いが高い国ほど、強姦認知件数が少ないように見えます。この「女性の身体に対する抑圧の度合い」というのは、「男性に暴力を振るわれても仕方ない状況がある」と考えている女性の比率、ドメスティックバイオレンスや性暴力・性犯罪に対する法整備の状況などから算出されている数値で、日本は各国平均値より2倍近く高い状況になっています。

たとえば日本では夫・恋人によるレイプを警察が「強姦事件」として扱うことはまずないでしょう。しかし、アメリカやカナダなど、より女性の身体への抑圧度の低い国では、たとえ夫・恋人であっても本人の同意無く行われたセックスはレイプとされます。また、セックスを合法的に行える「性的同意年齢」も16歳から20歳程度と日本より高く、この年齢に達していない子どもと成人がセックスをした場合、たとえ同意のもとであっても、成人側はレイプの罪に問われます。日本ではこの「同意の上でセックスをしてレイプに問われる年齢」は13歳と非常に低く設定されており、国際的にも問題視されています。

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男女不平等な政治・市民状況は女性議員比率、女性の政治参加のためのクオータ制の有無などから算出されています。強姦認知件数との関連性を見てみると、やはり右下の方にはこの数値が高く、女性に対してより抑圧的な国が固まっています。女性の政治参加が低い国ほど強姦事件の認知率が低いようです。

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古谷有希子

ジョージメイソン大学社会学研究科 博士課程。東京大学社会科学研究所 客員研究員。大学院修了後、ビジネスコーチとして日本でマネジメントコンサルティングに従事したのち、渡米。公共政策大学院、シンクタンクでのインターンなどを経て、現在は日本・アメリカで高校生・若者の就職問題の研究に従事する傍ら、NPOへのアドバイザリーも行う。社会政策、教育政策、教育のグローバリゼーションを専門とする。

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