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【外交・安保取材の現場から】
悪さを繰り返す隣人が突然それをやめると、よいことをしたかのように錯覚するが…そう、ドヤ顔のあの国です
声明に同意しただけでなく、中国の肝いりで「安保理は朝鮮半島とそれを超えた地域で緊張緩和に向けて努力する重要性を強調した」との一文も盛り込まれた。国連安保理の常任理事を務める大国としての責務を果たし、国際社会をリードしていると言わんばかりのアピールぶりだ。
北朝鮮の弾道ミサイル発射は明らかな国連決議違反で、国際社会の脅威だ。岸田氏は米国のケリー国務長官と電話会談し、非難声明が出されたことを歓迎した。ただ、非難声明は本来、発射後ただちに発出されるのが当然で、2カ月近くも遅れたことが異常といえる。
しかも中国が非難声明に難色を示していた理由は、米国による在韓米軍への最新鋭地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」配備決定に不快感を示す意図からで、身勝手というほかない。非難声明の発出が遅れた責任を追及こそすれ、評価にはまったく値しない。
中国が強硬路線から軟化姿勢に転じたのは、中国・杭州で4、5両日に開かれた20カ国・地域(G20)首脳会議で、中国が軍事拠点化を進める南シナ海問題の争点化を避けたいという思惑があったからだ。実際、中国は国際社会への協調路線にシフトする見返りに、G20で南シナ海問題を取り上げないよう日本を含む参加各国に水面下で働きかけていた。中国がホストをつとめるG20は「今年の中国外交のハイライト」(外務省幹部)といえる。その晴れ舞台が南シナ海問題で染まれば、習近平政権の沽券(こけん)に関わるというわけだ。
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