韓国との慰安婦問題の合意は
内容はともかく安全保障上は「正しい」
ところが、中国がロシアから、石油・天然ガスを無尽蔵に買うことができるようになればどうだろう?いくら米国でも、この流れを止めることはできない。これがルトワックのいう、「自己完結型の圧倒的支配勢力」の意味である。
だからルトワックは「日本はシベリア開発に入り込み、中ロを分断させろ!」といっているのだ。
日本は、ロシアに経済制裁を課している。にもかかわらず、安倍総理の強い熱意により、日ロ関係はそれほど悪くない。もちろん、日本が大々的にシベリア開発に乗り出すことなど、現時点ではありえない。しかし、経済協力を少しずつでも活性化させることで、「尖閣有事の際、ロシアが中国側に立って日本と戦う」といった破滅的事態を回避することが重要だ。
北方領土を返してもらうことも、もちろん大切ではあるが、日ロ関係を考えるときに日本がもっとも重要視すべきポイントは、「中国の戦略を無力化させること」なのである。
最後に、「3.韓国と和解すること」について考えてみよう。
「韓国と和解した方がいい」と書くと、反発心を抱く人も多いだろう。筆者も批判されることを覚悟している。
しかしそもそも、ここ数年韓国が狂ったように「反日プロパガンダ」を行っていたのは、韓国国民の日本への悪感情もさることながら、その背後に中国がいたことを知っておかなければならない。説明しよう。
08年、米国発「100年に1度の大不況」が起こった。この時、多くの国がそうだったように、韓国も「米国は沈み、中国の時代が来る」と確信した(日本には09年、「反米親中」民主党政権が誕生した)。そして韓国は、米国と距離を置き、中国に擦り寄るようになっていく。
そんな中国から12年11月、「反日統一共同戦線」参加への誘いがあった。ロシアは乗らなかったが、韓国は喜々として「戦線」に加わった。そして、13年2月に大統領に就任した朴氏は、全世界でいわゆる「告げ口外交」を行い、日本のイメージを失墜させるために、大いに働いた。
つまり朴大統領は、中国主導「反日統一共同戦線」のメンバーであり、その役どころは、「反日プロパガンダ部長」といったところだろう。ところが、昨年末から今年にかけて、韓国は米国との関係重視に立ち戻り、日本との和解にも動いている(昨年12月、いわゆる「慰安婦合意」もなされた)。
理由は、「中国は、核実験を繰り返す北朝鮮から韓国を守る気がない」ことがはっきりしたからである。日本からすれば、ずいぶんと身勝手な話だ。「ふざけるな!」と憤る気持ちはわかるが、「反日プロパガンダ部長」が「告げ口外交」をやめるのは、中国への打撃であり、日本の得である(韓国の反日プロパガンダは「慰安婦合意」後も、「慰安婦像設置運動」などが続いている。しかし、少なくとも大統領、閣僚レベルでの反日運動は、沈静化した)。
ここでもロシアの時と同様、戦略的に考え、感情(悪感情)を超える努力をしなければならない(米国は、「世界一、反米プロパガンダをした男」スターリンと組んで、勝利したではないか?)。
ロシア、韓国と「反日統一共同戦線」をつくり、そこに米国も引き入れることで、尖閣・沖縄を狙う中国。日本政府は、この戦略を無力化させるために、米国、ロシア、韓国との関係をますます強固にし、中国の理不尽な野望を挫折させなければならない。