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ロシアから見た「正義」 “反逆者”プーチンの挑戦

中国を弱体化させるには韓・露との関係改善が必要だ

北野幸伯 [国際関係アナリスト]
2016年9月5日
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世界最高の戦略家の提言
「日本はロシアを重要視せよ」

 次に、「2.ロシアとの友好関係を深化させていくこと」を見てみよう。

 日本には、「北方領土問題」や「シベリア抑留問題」で、ロシアを信用せず、嫌悪している人が多い。最近では「クリミア併合」や「ドーピング問題」で、ネガティブなイメージを抱いている人が大半だろう。その気持ちは、とても理解できる。

 しかし、中国のような強大な敵に立ち向かうには、「感情レベル」を超越しなければならない。たとえば過去、米英は、ナチスドイツ、日本に勝つために、「資本主義打倒」「米英打倒」を国是とするソ連の独裁者スターリンと組んだ。

 そして、米英は戦後、ソ連と対抗するために、かつて敵国だったドイツ(西ドイツ)、日本と同盟を結んだ。それでも劣勢になると、今度は共産党の一党独裁国・中国と組んだ。日本人から見ると「節操がない」ように思えるが、米英は、それで「勝利してきた」。こうした「リアリスト思考」ができないと、生き馬の目を抜くような国際社会で勝ち抜くことは難しいのだ。

 世界最高の戦略家と呼ばれるエドワード・ルトワックは、日本人向け著書「中国4.0 暴発する中華帝国」の中で、「日本にとってのロシアの重要性」について、詳しく触れている。一部引用してみよう。

<最初の課題は、ロシアのシベリア開発をどこまで援助できるかだ。これにも中国が関わっている。
中国がシベリアの資源を獲得してしまうと、自己完結型の圧倒的な支配勢力となってしまう。
 シベリアを当てにできない中国は、船を使って天然資源を輸入する必要があるため、海外に依存した状態となる。この場合、必ず「アメリカの海」を通過しなければならない。>(144p)


<ところがロシアを吸収できれば、中国はその弱点を克服できる。これによってわざわざ「海洋パワー」になる必要はなくなるからだ。
 この意味で、シベリアを中国の手に渡さないことは、日本にとって決定的に重要なのである。>(145p)


 説明が必要だろう。日本は第2次世界大戦で、なぜ米国との開戦を決意したのだろうか?そう、「ABCD包囲網」で石油が入ってこなくなったからだ。エネルギーがなくなれば、戦争もできず、経済活動もできない。これは当時の日本政府にとって、開戦に踏み切らざるを得ないほどの決定的出来事だったのだ。

 今の中国を見てみよう。この国は日本と同じく、エネルギーを中東に依存している。つまり、中東からタンカーで石油を運んでいる。ところが、その海路は、米国が支配している。

 もし、なにかのきっかけで米中対立が深刻になったとしよう。その時米国は、中国が「エネルギーを買えない状態」をつくりだすことができる。つまり、「ABCD包囲網」時の日本と同じ状況に追いこむことができるのだ。そうなると、中国は終わりだ。

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北野幸伯 [国際関係アナリスト]

きたの・よしのり/1970年長野県生まれ。モスクワ在住24年の国際関係アナリスト、作家。その独特の分析手法により、数々の予測を的中させている。1996年、日本人で初めて、ソ連時代「外交官・KGBエージェント養成所」と呼ばれたロシア外務省付属「モスクワ国際関係大学」(MGIMO)を卒業(政治学修士)。1999年創刊のメールマガジン「ロシア政治経済ジャーナル」は現在読者数3万6000人。ロシア関係で日本一の配信部数を誇る。主な著書に「隷属国家日本の岐路」(ダイヤモンド社)、「プーチン最後の聖戦」、「日本自立のためのプーチン最強講義」(共に集英社インターナショナル)など。


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