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ロシアから見た「正義」 “反逆者”プーチンの挑戦

中国を弱体化させるには韓・露との関係改善が必要だ

北野幸伯 [国際関係アナリスト]
2016年9月5日
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日本は、米国だけでなく
韓国・ロシアとも手を結ぶべき

 中国の戦略は、「米国、ロシア、韓国と一体化して、日本をつぶすこと」。これがわかれば、中国の「謀」を無力化させる方法は、理論的には簡単だ。

1.米国との同盟関係をますます強固にしていくこと。
 2.ロシアとの友好関係を深化させていくこと。
 3.韓国と和解すること。

 それぞれの現状を見てみよう。

「1. 米国との同盟関係をますます強固にしていくこと」

 既述のように、米国を100%アテにするべきではない。しかし、中国は「米国とだけは戦いたくない」と考えており、「日米安保」が抑止力になっているのは事実である。

 たとえば8月3日~11日、中国の公船と武装漁船の大群が、8日間尖閣周辺に居座った事件。日本政府は、強い緊張状態になった。これに対し、米国務省のトルドー報道部長は9日、尖閣諸島が日米安保の適用範囲であることを強調し、中国を牽制制した。すると翌々日、中国船の大群は消えたのだ。

 この出来事は、依然として「日米安保」が機能していることを示している。

 中国が実際に尖閣を侵略した時、米国がどう動くかは、日本にも、中国にも、恐らく米国自身にもわからないはずだ。それは、その時々の状況で変化するだろう。たとえば、「米軍を沖縄から追い出せ!」と主張する鳩山由紀夫氏のような人物が総理だったらどうだろうか?米国は、「日本を守りたい」とは思わないはずだ。

 しかし重要なのは、中国が「尖閣を侵略すれば、米国は動く可能性が高い」と信じていることなのだ。これが抑止力になる(8月9日、それが証明された)。だから日本は「中国の戦略を無力化させるために」、米国との関係をますます強固なものにしなければならない。

 できれば、中曽根、小泉時代のレベルまで、日米関係を良好にするべきだ。安倍総理とオバマ大統領は、比較的良い関係にある。しかし、次期大統領は、トランプになってもヒラリーになっても、楽ではなさそうだ。総理は「中国の戦略を無力化させるため」、どちらが大統領になっても「最高の関係を築く」と決意すべきである。

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北野幸伯 [国際関係アナリスト]

きたの・よしのり/1970年長野県生まれ。モスクワ在住24年の国際関係アナリスト、作家。その独特の分析手法により、数々の予測を的中させている。1996年、日本人で初めて、ソ連時代「外交官・KGBエージェント養成所」と呼ばれたロシア外務省付属「モスクワ国際関係大学」(MGIMO)を卒業(政治学修士)。1999年創刊のメールマガジン「ロシア政治経済ジャーナル」は現在読者数3万6000人。ロシア関係で日本一の配信部数を誇る。主な著書に「隷属国家日本の岐路」(ダイヤモンド社)、「プーチン最後の聖戦」、「日本自立のためのプーチン最強講義」(共に集英社インターナショナル)など。


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