クローン病とは?
クローン病は腸に炎症を起こす病気です。主な症状は下痢や血便などです。クローン病による炎症は口から肛門までのどこにでも現れます。肛門近くの皮膚に穴が開いて痔瘻(じろう)となることもあります。原因は不明です。治療には食事療法のうえ、薬で炎症を抑えます。主に以下の薬が使われます。
- アミノサリチル酸製剤
- スルファサラジン(商品名サラゾピリンなど)
- メサラジン(商品名ペンタサなど)
- ステロイド薬
- プレドニゾロン(商品名プレドニンなど)など
- 免疫抑制薬
- アザチオプリン(商品名イムランなど)など
- TNF-α阻害薬
- インフリキシマブ(商品名レミケードなど)など
治療がうまくいくと、症状が治まった状態(寛解)になります。しかし、一度寛解に至っても再発したり、さらに悪化することもあります。重症のクローン病により、大出血、腸に穴が開く(穿孔)、腸が狭くなって食物が通過できなくなる(腸閉塞)などの事態が引き起こされると、手術が必要になります。
なお病名の由来は、この病気を報告したバリル・バーナード・クローン(Crohn)という医師の名前です。生物工学で話題になるクローン(clone)とは関係ありません。
2015年6月までの研究状況
クローン病に対してアミノサリチル酸製剤の効果を調べた研究を紹介します。この研究は、過去にアミノサリチル酸を実際に使って治療した研究報告を集め、結果をまとめたものです。
研究班は2015年6月までの研究を検索して収集しました。
スルファサラジンの効果不明、メサラジンは効果あり
20件の研究が見つかりました。データをまとめると次の結果となりました。
- スルファサラジンは治療17週から18週でクローン病大腸炎の寛解をもたらす割合が偽薬と差がない。
- スルファサラジンによる副作用の頻度は偽薬と差がない。
- スルファサラジンよりもステロイド薬のほうが治療17週から18週で寛解に及ぶ割合が大きい。
- スルファサラジンよりもステロイド薬のほうが副作用が多い。深刻な副作用または副作用による治療中止に限ると差はない。
- オルサラジンは偽薬よりも効果が少なかったとする報告がある。
- 低用量メサラジン(1日1gから2g)は治療後6週で寛解に至る割合が偽薬よりも大きい。
- 低用量メサラジンによる副作用の頻度は偽薬と差がない。
- 高用量メサラジン調整放出剤(1日4g)使用後は重症度(クローン病活動指数)に偽薬と差がない。
- アミノサリチル酸製剤の副作用のうち最も多いのは頭痛、吐き気、嘔吐、腹痛、下痢。
解釈
スルファサラジンとメサラジンは比較的軽症のクローン病に対して最初に使われることが多い薬です。一般にステロイド薬よりも効果は弱いが副作用が少ないと考えられています。
この研究では、スルファサラジンの効果は明らかでないという結果でした。
対して、メサラジンは寛解がある程度期待できると見られます。メサラジンは日本でもペンタサなどの商品名で広く使われています(用量がこの報告と少し違います)。
有効成分を含まない偽薬よりも効かなかったとされるオルサラジンは日本では承認されていません。
よく使われる薬でも、調べてみると実は効果が確かめられないということはときどきあります。ここで紹介したように実際の効果を検証する研究が続けられ、よりよい治療を選ぶために役立てられています。