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 天皇陛下が退位の意向をにじませるお気持ちを表明をしたことを受け、天皇と「戦争の歴史」の関わりについて、昭和天皇について多数の著書がある吉田裕・一橋大教授(日本近現代史)に聞いた。

     ◇

 ――昭和天皇の戦争責任をめぐって、これまでどんな議論がなされてきたのでしょうか。

 東京裁判の判決では、天皇の戦争責任について何も書かれていません。東京裁判は本来、第2次以降の裁判もある予定でしたが、冷戦が起きたために継続されませんでした。連合国が日本への賠償請求権を放棄したこともあり、戦争責任の議論はあいまいになりました。

 国内的には、終戦直後に議論されたのは、国民を悲惨な戦争に導いたことの道義的責任論です。東京裁判で戦犯が裁かれたり、公職追放になったりしたのに、天皇だけ責任の所在を明らかにしないのはまずいという、保守派の側の議論が中心でした。おわびの詔書を出す案や、退位論もありました。

 昭和天皇が各県を巡幸し、兵士の遺族にも対面したのは、自分なりの償いの気持ちをこめていたと思いますが、責任はあいまいなままでした。

 議論の潮目が変わったのは、昭…

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