2016年9月5日 

甲状腺検査に関する質問及び要望書の提出について(報告)

 私ども「311甲状腺がん家族の会」は、以下のように、3通の質問及び要望書を、福島県県民健康調査検討委員会(星 北斗座長)、福島県小児科医会(太神和広会長)に送付させていただきましたので、ご報告申し上げます。

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2016年9月5日

 〒960-8670

福島市杉妻町2番16号

福島県保健福祉部県民健康調査課内

福島県県民健康調査検討委員会

座長  星 北斗 様

                    311甲状腺がん家族の会

                    Eメール:311tcfggmail.com

 

      福島民友(本年8月8日付け)記事についての質問

 

 先ずは、福島原発事故による県民の被ばく実態の解明へのご尽力に、敬意を表します。

 さて、私たちは県民健康調査(甲状腺検査)で“小児甲状腺がん”と判明した子どもやその親族が正会員である「311甲状腺がん家族の会」と申します。

 標記の新聞報道を受けて、当会の正会員の中から、甲状腺検査や、福島県立医科大学での治療について、不安、疑問など様々な意見が出されました。そこで、当会として、これらを集約して、下記の通り質問させていただきます。

 ご多忙のところ、誠に恐縮ですが、本文書を受理後、1週間以内に、上記メールアドレスまで回答くださいますよう、何卒、宜しくお願い申し上げます。

 なお、本質問は、現に県民健康調査(甲状腺検査)で“小児甲状腺がん”と診断され治療を受けている子どもやその家族からの質問であることをご理解いただければ幸いです。

 

                      記

 

○ 本年8月8日付け福島民友(7面)の“対論・甲状腺検査”について、以下、お尋ねします。

 

・質問1

 当該記事中で“「科学的な説明のため、1人も漏らさずきっちり調べるべきだ」という意見もないだろうし・・・”と述べられています。

 現行の甲状腺検査は、福島原発事故による放射線被ばくを踏まえて、県民の不安に寄り添い、かつ被ばくの影響の有無などを調べることを目的として実施されていることから、検査対象者を網羅的に調べています。述べるまでもなく、疫学調査においては、データ量の多寡は、その信頼性を左右します。また、先行検査、本格検査の結果、これまでに172人の小児甲状腺がんないしその疑いの子どもたちが確認されています。

 そのような中で、上記記事中において、貴職は網羅的に調べることの必要性について疑問を投げかけています。甲状腺検査の目的、小児甲状腺がん多発が認められている状況などを踏まえた上で、なぜ網羅的な調査の必要性に疑問を呈するのか、その根拠を教えてください。

 

・質問2

 当該記事中で“がんを見つけて手術したケースなど、検査によりさまざまな影響が生じていることは事実。”と述べられています。

 この文脈から、甲状腺検査の結果、発見しなくてもよいがんを発見し、それらを手術したとも解釈できます。そこで、実際に、甲状腺検査で発見しなくてもよい小児甲状腺がんを発見した事例が存在したのか、教えてください。

 

・質問3

 当該記事中で“100点満点の正解がない中、みんなが納得できる着地点を見つけることができるかどうかが議論のポイントになる。”と述べられています。

 県民健康調査検討委員会には、調査結果をもとに、科学的な根拠に基づいて、合理的で妥当な判断が求められています。しかし、当該記事からは、科学的根拠に基づいた合理的で妥当な判断よりも、“みんなが納得できる着地点”を模索することが優先されると誤解されかねません。

 被ばくという事実、県内で多発している小児甲状腺がんと被ばくとの因果関係が未解明であることなどを踏まえれば、今、私たちの子どもたちの身体の中で、どのような変化が生じているのか、あるいは生じていないのか、それをなるべく正確に知る権利が私たちにはあるはずです。

 そこで、この発言の真意についてお尋ねします。

 

・質問4

 当該記事中で“18歳を超えると(県外への就職、進学などで)学校での集団検査ができなくなり、極端に受診率が下がる。こういう人をその先どこまで深追いするかは論点の一つになる。”と述べています。

 既述の通り、被ばくと小児甲状腺がん発症との因果関係については、未だ結論が得られていません。また、小児甲状腺がんについては、そもそも、その病態が十分に解明されていません。

 そのような中では、疫学的な見地からも可能な限り、検査対象者への甲状腺検査を継続するのが当然だと考えていますが、貴職は、検査対象者の縮小を示唆しています。しかし、これまで甲状腺検査受診を積極的に勧奨してきた事実に鑑みれば、検査体制の縮小は、これまでの甲状腺検査と明らかに矛盾します。

 そこで、甲状腺検査体制の縮小を示唆しているのであれば、その合理的な根拠を教えてください。

 

・質問5

 上記質問4に関連して、仮に検査体制を縮小する場合、これまで受診勧奨などをもって実施された甲状腺検査により判明した小児甲状腺がんへの手術の妥当性について、貴職の見解をお示しください(類似の質問を、本年4月12日付けの当会からの"手術実態の解明に関する要請書”でも触れています)。

以上

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2016年9月5日

 

960-0112

福島県福島市南矢野目字鼓田6-1

医療法人いちかわクリニック内

福島県小児科医会

太神 和広 様

                    311甲状腺がん家族の会

                     Eメール:311tcfggmail.com

 

      福島民友(本年8月8日付け)記事についての質問

 

 私たちは県民健康調査(甲状腺検査)で“小児甲状腺がん”と判明した子どもやその親族が正会員である「311甲状腺がん家族の会」と申します。

 標記の新聞報道を受けて、当会の正会員からは、「私たちは過剰な手術を受けたのか」などの、不安や疑問、様々な意見が出されました。そこで、当会として、これらを集約して、下記の通り質問させていただきます。

 ご多忙のところ、誠に恐縮ですが、本文書を受理後、1週間以内に、上記メールアドレスまで回答くださいますよう、宜しくお願い申し上げます。

 なお、本質問は、現に県民健康調査(甲状腺検査)で“小児甲状腺がん”と診断され治療を受けている子どもやその家族からの質問であることをご理解いただければ幸いです。

 

                       記

 

○ 本年8月8日付け福島民友(7面)の“対論・甲状腺検査”について、以下、お尋ねします。

 

・質問1

 当該記事中で“放射線と関係なく以前から一定割合であった「潜在がん」を見つけているにすぎないと、医学的知識のある人は考えるだろう。”と述べられています。

 しかし、甲状腺検査で判明している小児甲状腺がんないしその疑いについては、県民健康調査検討委員会でも、スクリーニング効果では説明できない多発を認めた上で、その原因は被ばくの影響か否か、結論は出ていません。

 さらに、甲状腺検査で発見された小児甲状腺がんへの手術では、その大半で被膜外浸潤、所属リンパ節への転移などが確認され、積極的な治療を要するいわゆるハイリスクの患者さんが存在したと報告されています。

 また、「過剰診療」などとする意見もありますが、そうした見解が確定的に述べられる根拠を持つわけではなく、いまだ解明の途上にあります。

 従いまして、先生のこのような発言は、未解明であるにもかかわらず、現在見つかっているがんが被ばくと関係ない”潜在がん”であると確定しているかのような誤認を一般市民の間に広げ、甲状腺検査の受診率の低下を招くのではないかと懸念しています。

 そこで、当該発言の合理的な根拠について教えてください。

 

・質問2

 当該記事中で“潜在がんを検診で早期に発見することがその人のためになるのかというと、甲状腺がんについてはそうではないと言われている。”と述べられています。

 当会の正会員(手術を受けた患者さん)は、医師から手術が必要と言われて手術を受けているわけですが、先生の発言は、その会員に対して、“あなたの手術は、あなたのためになるかというと、そうではない”と言っていることになります。

 これは非常に重要な発言です。なぜならば、これまで甲状腺検査で小児甲状腺がんと判明した患者に行われた手術そのものへの疑念を生じかねないからです。

 そこで、ぜひ、この発言の根拠を説明してください。

 

・質問3

 当該記事中で、“韓国で甲状腺検診を実施した結果、がんの発見率はどんどん上がって手術も増えたが、その一方でがんの死亡率は変わらなかった。”と述べられています。

 韓国の事例は成人女性を対象としたものであり、さらに、韓国では被ばくという事実は加わっていません。従いまして、韓国の事例と、福島県における子どもの甲状腺がんの多発を単純に比較することは、適切ではないと考えています。

 そこで、韓国の上記事例と、福島での事例を比較することの合理的な根拠を教えてください。

 

・質問4

 当該記事中で“つまり進行が遅く、予後が良いがんを早期に見つけてもメリットは少なく、がんと診断されることに伴うデメリットが生じた。今後の検査ではこうしたことを十分説明する必要がある。「それなら検査は受けません」と考える人も出てくるだろう。”と述べています。

 記事中で“がんと診断されることに伴うデメリット”と述べていますが、そのデメリットとは何か、またすでに甲状腺がんと診断された患者さんたちの多くにそのデメリットがどのように生じているのか、具体的に教えてください。

以上

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2016年9月5日

 

960-0112

福島県福島市南矢野目字鼓田6-1

医療法人いちかわクリニック内

 

福島県小児科医会

会長 太神 和広 様

 

                    311甲状腺がん家族の会

                    Eメール:311tcfggmail.com

 

      本年8月25日付けの福島県への要請について(質問と要望)

 

 私たちは県民健康調査(甲状腺検査)で“小児甲状腺がん”と判明した子どもやその親族が正会員である「311甲状腺がん家族の会」と申します。

 標記について、下記の通り質問および要望をさせていただきます。

 ご多忙のところ、誠に恐縮ですが、本文書を受理後、1週間以内に、上記メールアドレスまで回答くださいますよう、宜しくお願い申し上げます。

 なお、本質問は、現に県民健康調査(甲状腺検査)で“小児甲状腺がん”と診断され治療を受けている子どもやその家族からの質問であることをご理解いただければ幸いです。

 

                     記

○ 質問事項

 御会が福島県に提出した要望書には、下記の記載があります。

→(引用開始)

県民健康調査における甲状腺検査(以下「甲状腺検査」)に関しては以下の事項を要望する

①検査の事前説明と同意取得

 甲状腺検査の必要性、メリットならびに考えられるデメリット両面についての受診者(保護者)への十分な説明を徹底することと、それらを明記した同意書を取得すること

←(引用終了)

 当該文書中の、甲状腺検査での“考えられるデメリット”とは、具体的にどのような事象を想定されているか、教えてください。

 

 

○ 要望事項 現状をしっかりと把握してください

 福島原発事故の放射線被ばくによる健康被害、特に小児甲状腺がん発症との因果関係については、検討委員会でも、未だ結論が得られていません。また、小児甲状腺がんについては、そもそも、その病態が十分に解明されていません。

 その上で、甲状腺検査は、福島原発事故による放射線被ばくを踏まえて、県民の不安に寄り添い、被ばくの影響の有無を調べることを目的として実施されています。

 また、甲状腺検査で発見された小児甲状腺がんへの手術では、その大半で被膜外浸潤、所属リンパ節への転移などが確認され、積極的な治療を要するいわゆるハイリスクの患者さんが相当数、存在したと報告されています。

 事実、当会の正会員の中には、甲状腺検査で小児甲状腺がんが判明し、手術の待機中に腫瘍が進展した子どもさん、切除手術の後に再発の疑いが拭えない子どもさんがいます。また、再発・転移を経験し、一生、治療と向き合わざる得ない子どもさんもいます。

 こうした現状からも、”過剰診断、過剰検診“と”過剰治療“は明確に分けて考えなければならないと思っています。そして、不安の払拭や被ばくとの因果関係を究明する上では、現状の甲状腺検査を、しっかりと継続すべきであり、それは決して"過剰診断、過剰検診"に当たるものではないと考えています。

 何よりも、子どもたちの身体の中で、どのようなことが生じているのか、あるいは、生じていないのか、医療にはそれを追及する使命があり、私たちにはそれを知る権利があるはずです。甲状腺検査は正に、その目的の下に実施されていると思っています。

 御会の今般の福島県への要請は、県民に甲状腺検査についての誤解を招き、不安の払拭を妨げ、ひいては甲状腺検査の受診率の低下を生じかねません。

 当初の甲状腺検査の目的に立ち返り、網羅的な検査継続を求めるとともに、医師の責務である医師法第一条“医師は、医療及び保健指導を掌ることによって公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もって国民の健康な生活を確保するものとする。”を全ういただくことを切望します。

 

 

 

 以上

 

 

 

 

福島県に要望書を提出しました


2016年8月23日に福島県と初めての懇談を行い、要望書を提出しました。

 

福島県民健康調査検討委員会へ要請


2016年4月4日に福島県民健康調査検討委員会に要請文を送付しました。

 

311甲状腺がん家族の会を設立します


私たちの子どもたちは、唐突に甲状腺がんと宣告され、その瞬間から、がんと向き合わざるを得ない人生を強いられています。同時に、甲状腺がんと診断された子どもを持つ私たち家族は、まわりの目を恐れるなど、様々な理由で孤立を余儀なくされてきました。そのため必要な情報も共有できず、さらに悩みを深めています。

この会は、こうした患者家族同士が交流するために設立しました。今後、患者の治療および生活の質を高めることができるように情報交換を行い、家族間の交流で見えてきた様々な課題の解決のために取り組んでいきたいと思います。