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認知症早期治療で世界最大規模の研究…神戸の70歳以上、5万人を調査
世界保健機関(WHO)神戸センターと神戸大などは来年から、70歳以上の神戸市民約5万人を対象に認知症の大規模研究を始める。
認知症の「予備軍」に早期診断・治療を促し、脳トレーニングなどの学習を通して、予防や症状の抑制、介護負担の軽減を目指す。効果が確認できれば、神戸発の認知症対策プログラムとして世界に広めたい考えだ。
同センターによると、認知症の予防・進行抑制の研究としては世界最大規模。10日に同市で開かれる先進7か国(G7)保健相会合の関連イベントで発表する。
大規模研究では、神戸市が70歳以上の市民に送り、自らの健康状態を調べる「基本チェックリスト」(厚生労働省作成)の結果を基に認知症の予備軍を選別。最寄りの診療所や神戸大病院への受診を促し、認知症に関する相談なども勧めて、早期の診断と治療に結びつける。脳トレなどを行う教室や、高齢者向けの生涯学習講座への参加も呼びかける。
予備軍は約8000人と見込んでいる。予備軍とされなかった市民とともに3年間追跡し、早期診断・治療や脳トレの効果、チェックリストの有用性などを検証する。
同センターのアレックス・ロス所長は「研究成果は日本だけではなく、世界各国にとっても非常に有益だ。日本ほど裕福ではない国にも役立てたい」としている。
厚労省の推計では、65歳以上の4人に1人は認知症か、その予備軍。2025年には患者数が約700万人となり、12年の1・5倍に達するという。根本的な治療法はないが、早期診断・治療で進行を遅らせれば、患者の日常生活の様々な障害を取り除き、介護の負担も軽減できる可能性がある。