クルーズ客倍増も大阪はスルー? 欧米富裕層は爆買いより“伝統文化”

産経ニュース / 2016年9月2日 15時18分

クルーズ船で来日した外国人旅行客数の推移※国土交通省の資料による(産経新聞)

 豪華なクルーズ船で日本を訪れる外国人旅行客が増えている。昨年は初めて全国で100万人を突破。関西でも、今年、大阪港に立ち寄るクルーズ船の数は、2年前から倍増しそうだ。一度の寄港で数千人規模の観光需要が見込めることから、各地の港町は地域の特色を生かしたツアーを構築。乗客に日本の伝統文化への関心が高い欧米人が多く、京都、奈良へ“素通り”されてしまうことに悩む大阪も、官民一体となった巻き返しに力を入れている。

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 大阪市や大阪商工会議所などでつくる「大阪港クルーズ客船誘致推進会議」のパンフレットでは、大阪に寄港したクルーズ船客が楽しめる12種類の日帰り観光コースが紹介されている。「奈良や京都にはない大阪ならではの街の魅力を知ってもらいたい」(担当者)と旅行業者向けに作成された。

 ◆大阪城しかない?

 観光立国をめざす政府方針の下、クルーズ船で来日した外国人旅行客数は昨年111万6千人に上り、平成32年の目標だった100万人を大幅に前倒して達成した。大阪市によると、大阪港に立ち寄るクルーズ船も増えており、今年は2年前の13隻の2・15倍に当たる28隻が入港する見込みだ。21隻が寄港した昨年の乗客総数は2万8800人。大阪府を訪れた外国人観光客716万人と比べれば少ないが、関係者は「経済効果は高い」と期待している。

 中国人観光客の“爆買い”が目立つ大阪だが、クルーズ船客の場合はヨーロッパや英米からの富裕層が多いのが特徴。電化製品などの買い物より、日本情緒あふれる神社仏閣の見物や茶の湯体験などに関心があり、京都、奈良へ出かけてしまう人が多いのが関係者の悩みになっている。

 大阪市の担当者は「大阪城はそれなりに有名だが、他に何もないと思われているようだ」と分析。「四天王寺や堺の茶の湯など、日本らしさを感じられる場所が大阪にもたくさんあることをPRしていきたい」と話す。

 ◆港町あの手この手

 クルーズ船の寄港に地域経済の活性化を期待するのは大阪だけではない。

 鳥取県では、隣り合う島根県の観光協会などとともに、歴史に興味ある40歳フランス人男性▽アニメや漫画が好きな30歳代台湾人男性-などと架空のターゲットを定めて観光ルートを作り、今年は境港で昨年の1・5倍の寄港を見込む。

 6月に中国人観光客ら約6千人を乗せたクルーズ船が寄港した名古屋市の金城ふ頭では、総合免税店のラオックスが「爆買い」需要を狙い、臨時出店した。

 和歌山県新宮市は4月、新宮港に入ったクルーズ船を平安衣装に身を包んだ市観光協会の女性職員らが出迎え、「世界遺産・熊野」の海の玄関口をPRした。

 いずれも行政と民間が協力しているのが特徴で、大阪大の赤井伸郎教授(公共経済学)は「官民一体で観光客の取り込み策を考えて実践していくと、街の結束力が高まり、にぎわいが生まれる」と期待している。

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