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REDSTONE物語 作者:パッシー
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知ってるけど、知らない場所

【運比シグ買います。 耳よろ】
「ひゃっ!!」

突然頭の中に響いた声に少女は驚き、耳を抑えてしゃがみこんだ。

「な、何が…。」
【納骨秘密PT募集。BISさんいます。火力、低下、範囲、リストからどうぞ。】
「ぴゃっ!!」

またも頭の中に響く声に少女はビクビクしながら辺を見渡す。
見たことのある立派な噴水。遠くに見えるのはギルド連合会、だったはずだ。
そして大勢の人、人、人…。それは少女を圧倒するのに十分すぎる数だった。

「な、なんでこんなに人が…。」
【売)TRSタートNx、THP王冠UM、どちらも値段添えてmmyr。】
「ひぅ…、なんなのよこれ…。」

先ほどから頭の中に響く声、こんなのは少女は知らない。
それに古都の様子も何か妙だ。普段こんなに人の姿があるわけがない。
しかもどの人を見ても出で立ちは冒険者…、つまり今の少女と同じ様な格好なのだ。

「うぅ…。」

よろよろとよろめきながら少女は噴水の側まで倒れるように移動していく。
そしてその場に座り込む。

「ここは古都ブルンネンシュティグよね…?」
【ぴぎゃっきょo/o/o/o/oい^q^】
「ぴゃああっ!!」
「あの、さっきからどうかしましたか?」

意味のわからない叫び声が頭の中でガンガンと響き、少女が頭を抱える。
その少女に頭上から声がかかった。

「えっ…?」
「…?」

少女が顔を上げるとそこには真っ赤なマントをなびかせ、重厚な鎧を身に付け、左腕には小型のダガーの様なものを取り付けた男が不思議そうな顔をして立っていた。

「え、えっと、あの…。」
「見たところ初心者だよね?白チャで奇声っぽいのあげてたけどw」
「しろちゃ…?」

鎧の男は笑いながらそんなことを言った。

「あぁ、普通のチャットの事が白チャね。…マジで初心者か。」
「普通のちゃっと…。」

少女は鎧の男の言葉を繰り返すように呟く。…言葉はわかるのに言葉の意味がわからない。
少女が首を捻るようにしていると。

「うん。他にPTチャとかギルチャとかあるんだけど…。まぁそれは他のオンゲでも…。」
【鏡貸し TRSワーム、T力比ワーム、T知識ワーム、T知識太極 担保などは要相談。】
「ひゃああ!」
「えっ…?」

またまた頭に響く声に少女が声をあげる。それをまた不思議そうな顔をして鎧の男は見ていた。

「あ、頭の中で声が…。」
「は?…ええっと…。」
「さっきから意味のわからない声が頭の中で響くんです!」

堪えきれないといった様に少女が声を出す。困惑した顔で頬を書きながら鎧の男は口を閉ざす。

「あー…、頭の中ねぇ…。あっ!!もしかしてワルチャの事?」
「わ、わるちゃ…?」
「多分そういうロールプレイでしょ?なるほどなぁ…、確かにワルチャとか叫びを表現するならそうなるか。」
「ろ、ろーる…。」

うんうんと頷くようにしている鎧の男を見ながら今度は少女が困惑した様な顔になる。やっぱりこの人の言ってる事の意味がわからないと。

「とりあえずシステム開いて、コミュニティーのとこの叫びとワールドチャットのチェック消せば表示されなくなるけど…。」
「???」

多分一生懸命説明しているであろう男の言葉は少女には意味がわからなかった。

「あー、んーと…。強く念じてみればいいんじゃない?ワールドチャットと叫びを消してくださいってww」
「強く…念じる…。」

笑いながらも男は解決策を出してくれた。少女は藁にも縋る思いで心の中で強く念じた。

(消してください、消してください…。わーるどちゃっととさけびを消してください…。)
「消してください…。」
「白チャで言ってるし、それにちょっと怖いわww…てゆうか今時こんなロールプレイも珍しいな…。コンセプトとしてはRSのキャラになりきってるって感じか?いや、なりきってるってかキャラそのものになってRSの世界に入ってる感じか…。新しいな。」

少女が必死になって祈ってる横で男は独り言のように呟く。少女も少女でぶつぶつと祈りの言葉を発する様は傍から見ると頭のおかしい二人組だろう。
しばらくし少女が祈っていると。

「今ワルチャ流れたけど…、消えてた?」
「消えてくだ…えっ?」
「あー、頭の中で声響くやつ来てたけど響いてた?」
「本当ですの!!?響いてなかったですわ!」
「oh!お嬢様口調…。うん、設定出来たみたいだね。」
「ありがとうございますわ!」

男の言葉を聞いて少女は飛び跳ねるように喜び、男にお礼を言う。
意味のわからない言葉はこの際省いてこの男の事を信用しようと少女はちょっぴり思った。

「完全初心者なのにロープレとは恐れ入った…。まぁ遊び方は人それぞれだよな。」
「…?あっ!あの、お名前を聞いてもよろしいでしょうか?」
「ん、いや見えて…。あぁ、うん。」

ここまで世話になって話しているのに少女は男の名前も聞いていない事に気がつき、慌てて名前を聞く。

「俺の名前は、‡狂乱剣舞‡。…うわ名乗るの恥ずかしいなこれ。」
「えっ…。」

男の口から思いもしない名前が出てきた。また少女の意味のわからない言葉だった。
赤面した顔を隠すように男は頬をかく。

「あー、知り合いからはキョウって呼ばれてるからそっちでお願いしたい…。」
「キョウ…さん…。」

今度は少女も多少は馴染みのある名前だった。確かめるように名前を口に出す。

「わたくしは…。」

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