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REDSTONE物語 作者:パッシー
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旅立ちの時

フランデル大陸の極東地方、新興王国ビガプールの城の正面。
一人の少女が白髪の老人と対面し、別れを惜しんでいた。

「大丈夫よ、必ず見つけて来るから…。」

強い光を宿した目のまま、少女がそう宣言する。

「お嬢様…。」
「もうこれしか方法がない。…そうでしょう?」

苦々しい表情をした老人が頷く。

「しかし、何もお嬢様自らが…。」
「わたくしの願いなのだから、他の人には任せられませんわ。」
「いえ、旦那様のご病気の完治は私達の願いでもあります。」
「一番に願ってるのはわたくしですわ。」

そこまで言われ、老人は口を閉ざした。
そして笑顔で口を開ける。

「わかりました。私共はお嬢様の帰りを待つことにします。」
「そうして頂戴。」

少女は大きく深呼吸をし、老人の後ろの城を目に焼き付けるように見る。
その姿をいつでも思い出せるように。

「…では、行ってきますわ。」
「…ご武運を。」

老人が腰を折り、お辞儀する様を確認し、少女は踵を返す。
そして、後ろを振り向かずに足を進めた。

城下町を顔を隠し歩きながら眺めて行く。
もうここには戻ってこれないかもしれない。そんな思いが少女の心の中に湧き出る。
しかし、それをかき消すように足取りはしっかりと歩いて行く。
目的の場所まで後少しなのだから。

「古都ブルンネンシュティグまでお願いするわ。」
「いいですよ、…確かに。」

少女が訪れたのはテレポーター…確か名前はセハだったか、少女はそんなことを思いながら総合ファーストポータルサービスの利用料を支払う。
杖を掲げ、呪文を詠唱していくテレポーター。

「よい旅を。…お嬢様。」
「なっ!…何故、わた…。」

にやりとテレポーターが笑い、醜悪な笑顔を見せた。
そのことに危機感を覚え、少女はとっさに下がろうとしたが既に詠唱は完了し、姿が消えかけていた。
そして少女の姿が完全に消える。

「…。」

笑顔のままのテレポーターが忽然と姿を消す。
そして、この場所には何も残ってはいなかった。
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