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「君の名は。」の重要な疑問(ネタバレ)

 映画観てきた。すばらしくよかった。「男女が入れ替わる」古典的なネタから、よもやこんなにも美しい物語を見せてくれるとは。「シン・ゴジラ」が濃厚な庵野ワールドなら、「君の名は。」は適度な新海マイルドだな。いつもと違うと思ってたら、このつぶやきで納得。

 観た人のつぶやきを見ると、各々の興味が透けて面白い。「彗星の軌道がおかしい」「電車の音がおかしい」「その地形でヤマビコは出ない」「トイレはなぜ○○だけ?(ジェンダー的な問題)」「X68000」など、ツッコミどころが各人のリアリティラインになるのかも。実写よりも生々しく美しい映像を眺めていると辛口になるのは分かる。けれど、もっと基本的な一点が抜けてないか? 以下ネタバレ全開で書く。

 (マウス反転でネタバレ表示)それは日付。身体が入れ替わったとき、なぜ「今日はいつなのか」を考えないのだろうか? 瀧も三葉も、同じタイミングで入れ替わっているという認識でいる(「デートが終わる頃には彗星が見えるね」というメッセージが象徴的だ)。二人のリアクションを画面分割/同時並行に描くことで、時間のズレをミスリードさせるなんて、上手い叙述トリックだと感心する一方、観終ってから後を引く。学校の準備やバイトの予定など、入れ替わった「一日」を維持していくために、カレンダーは必須かと(三葉の部屋にあった…はず)。iPhoneみたいな端末で日記をつけるのなら、否が応でも日付は目に入るはず。

○「曜日」だけで「年」まで見てなかったのでは?
→ありうる。学校もバイトも曜日だけで事足りる場合が多かろう。でも「月日」まで見落とすことはないだろう。「月日+曜日」が一致していたと仮定しても、最短6年かかる([参照])ので、「3年のズレ」とは計算が合わない。

○「忘れてしまったのでは」
→大いにありうる。入れ替わっていた間の記憶は飛んでいるので(夢を見ているのと一緒)、たとえ年のズレに気づいたとしても、覚えていないという仕掛け(糸守という地名を忘れてしまうように)。観客をミスリードする演出の一環だともいえる。それでも、アプリの日記やノートなどで相手に「伝える」ことはできる。入れ替わったというだけでも大事件なので、そこまで気づけなかったのかも。

 『時間SFの文法』決定論/時間線の分岐/因果ループを描いた『時間SFの文法』[レビュー]によると、「歴史改変型-異時間通信」パターンになるが、そこを伏せて「入れ替え話」から入っているのが上手いね。ループ話を伏せて、魔法少女モノとして入っているアニメを思い出す。定番で隠した定番の組合せ、これからも傑作に出会えそうだ。

 謎を抱えて、原作小説にあたってみよう。

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