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 裁判所の許可を得て検察などが容疑者の刑事責任能力の有無を調べる「鑑定留置」が、2009年の裁判員裁判の導入を機に増えている。市民裁判員への分かりやすい立証を意識した結果とみられ、最高裁の調べで15年は導入前のほぼ倍の483件。兵庫県内では同7倍の21件だった。刑事手続きの専門家は「裁判員裁判の対応に加え、動機の不可解な事件などが増えたためではないか」と増加要因を分析する。

 鑑定留置は、検察が容疑者段階で請求する場合が大半で、殺人や傷害致死など裁判員裁判の対象事件が多い。

 裁判員裁判導入前の08年は容疑者段階で全国242件(兵庫は3件)だった。09年から急増し、14年は最多の520件。兵庫では09年以降、2桁で推移し、12年の26件が最多だった。

 これに対し裁判員裁判は10年の1797件をピークに減少が続いており、昨年は400件以上少ない1333件。殺人や傷害致死罪を問う裁判も10年の491件から計81件減った。

 一方で、動機などの慎重な解明が求められる事件は相次いでいる。兵庫県内では今年5月、神戸市西区の80代の男が「家事をしない」と妻を殺害。尼崎市の60代の男は騒音トラブルから同じアパートに住む親子2人を死傷させた疑いが持たれている。

 ともに鑑定留置が認められており、検察幹部は「起訴できると分かっていても、公判で刑事責任能力が争われそうな場合、鑑定にかけることがある」と説明する。神奈川県相模原市で知的障害者19人が刺殺された事件で逮捕された男も鑑定留置が検討されている。

 鑑定留置が重視される理由について、渡辺修・甲南大法科大学院教授(刑事訴訟法)は「容疑者の責任能力を慎重に判断するため、事件当時の心理状態について専門家の知見を求めることが多くなっている」と指摘。課題として鑑定期間の長期化を挙げ「容疑者の拘束期間を短縮するには専門家の増員も欠かせない」としている。(有島弘記)

 【鑑定留置】容疑者の刑事責任能力の有無などを調べるため、検察などが裁判所に請求し、必要と認められた場合に実施される。起訴後の被告人も対象だが、大半は容疑者段階。容疑者の場合は勾留が停止され、移送先の医療機関などで専門医らが数カ月かけて心身の状態を調べる。鑑定結果は検察が起訴するかどうかの判断材料となり、公判での立証にも生かされる。

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