旬の甘いとうもろこしは、なるべく直球で食べたい。
スープと聞いて、最初にコーンスープを思い浮かべる人は多いと思います。スープ界においてはとうもろこしは無二の存在。なめらかでクリーミー、とうもろこしの香りがただようコーンポタージュの魅力は、もう説明するまでもありませんね。
その一方で、ゆでたて、焼きたてのとうもろこしを両手でもって思い切りかじるという、ワイルドな食べ方も捨てがたい。素材をミキサーにかけるコーンポタージュでは、つぶつぶ感が失われてしまいます。また、ミルクや生クリームをはじめ、いろいろな素材や手間が加えられていることも多く、とうもろこしをまっすぐ味わう、のとはまた少し違います。
今日は「とうもろこしを丸かじりしている気分」で味わえる、シンプルなとうもろこしのスープをご紹介しましょう。
近年は9月中頃まで出回っていますので、まだまだ楽しめます。
さあ、それではレシピです!
とうもろこしの塩バタースープ
材料(2~3人分)
とうもろこし 2本
バター 20g
塩 小さじ約1/2
1.とうもろこしを切る
とうもろこしは皮をむいて輪切りに4等分し、包丁で粒を削ぎ落とす ★1 。
2.炒める
鍋にバター20g ★2 を入れて火にかける。
溶けかけたらとうもろこしの粒を加え、いい香りがしてくるまで約5分、焦げ付きそうなときは水少々を足しながら弱火~中火で炒める。★3
3.煮込む
塩小さじ1/2、水400mLを加え、沸騰したら蓋をして弱火で10分煮る。味を見ながらお好みで塩を加えてできあがり。好みでバター(分量記載外)を落とす。
とても簡単なスープですが、★をつけたポイントの解説で、さらにおいしく作るコツをどうぞ!
・とうもろこしの扱いかた
・バターについて
・とうもろこしの火の入れかた
★ポイント1.とうもろこしの扱いかた
とうもろこしはむいてあるものではなく、濃い緑の皮つきのものを選びましょう。ひげがしっとりしていて、茶色くなっているものが完熟のしるしです。
とうもろこしは包丁で簡単に削いでしまいましょう。粒もきちんと残りますし、切れてしまったとうもろこしからも、スープに無駄なく味が出ます。
皮をむき、ひげをとったら、まず1/4にします。力が入りやすい刃元に近いほうで切りましょう。
きれいな円筒の真ん中の2つから切っていく
次に、包丁でなるべく粒の根元から粒を切っていきます。はじめて切るときは、きれいな円筒の真ん中の2つからチャレンジするとコツがつかみやすいと思います。
芯を指でしっかり押さえて、ざくっと押し切る
「どこまで切ればいいの?」という疑問におこたえして、上からの画像も。
端の方の粒が切れても気にせずに
ずらしながら少しずつ切っていくと……
5回ほどで粒が全部とれる
やっているうちに慣れていきます。生のとうもろこしは固いので、手を切らないように注意してくださいね。
★ポイント2.バターについて
このスープのもう一つの主役が、バターです。
乳製品売場には「有塩バター」と「無塩バター」があります。料理に有塩バターを使うと、塩味のコントロールをしにくくなるから無塩バターを使う、という人もいるようです。
ちょっと検証してみましょう。有塩バター100gに含まれる塩の量はメーカーによって違いますが、およそ1.4~1.6g。そして、食塩小さじ1は約6g。つまり今回のスープで使うバター20gに含まれる塩0.3gは小さじ1/20ということになります。つまり、大量に作るレストランではともかく、家庭で作るときはあまり気にしなくて大丈夫です。
それより最後にきちんと味見をして、自分の舌で確かめることが大事です。
バターの種類もピンからキリまであります。スーパーで手に入る一般的なバターは現在200gで400円ほど。同じ重さで1000円前後するものもあります。値の張る高級バターはおいしいものも多いです。
でも、普通のバターでも十分おいしいので、手近なもので大丈夫。高級かどうかより、むしろ鮮度を気にしてください。すぐ使わない分は、小分けして冷凍庫に入れておきます。
発酵バターという超高級バターについても参考までに。こちらはさらに値段が高く、安いものでも約600円~800円/200g、高いと2,000円/200gするような製品も!
発酵バターは、バターを作る工程でクリームを乳酸菌発酵させたもので、独特の風味や香りがあります。日本のカルピス発酵バターや北海道トラピストバター、外国産ではフランスのエシレバターが有名ですね。
高級ですが、それでもトーストはじめ、料理やお菓子、パン作りに使うと風味がぐっと増しておいしくなります。興味がある方は試してみてください。
今回のレシピでは、とうもろこしをバターで炒めます。バターが焦げるのは乳製品だから。その焦げた部分がうまみになりますから、すこし焦がすぐらいでちょうどいいです。なべ底にほんのり淡い色がつく感じが理想です。炒め方は次のポイントで。
★ポイント3.とうもろこしの火の入れかた
とうもろこしに火を入れると、加熱した穀物特有の、いい香りがします。
粒をそいだばかりのうもろこしは、生っぽい匂いですよね。これを、おいしそうな香りがしてくるまで炒めるのが、ミッションです。バターもとうもろこしも焦げやすい食材です。でも、この焦げもうまみになるので、慌てなくても大丈夫。
焦がし過ぎないように気をつけつつ、なべ底がうっすら焦げてきたら、大さじ1ほどの水を加えて、焦げをこそげるようにしながら炒めます。
焦げてきたら水を少量加える
約5分、白っぽかったとうもろこしが、少し透明がかった黄色になり、とうもろこしから香りがしてきたら炒めは完了です!
ボリュームのあるスープです。コーンのうまみが溶け出したスープと一緒に、とうもろこしの粒を思う存分に食べてくださいね。
さらに進化したアレンジスープ
最近は出回る時期がだいぶ長くなりましたが、とうもろこしは基本、夏だけの野菜です。同じレシピからのアレンジで、どんどん食べ回したいところ。
とうもろこしの鮮やかな色を生かして、他の野菜と組み合わせるのもいいですね。
いんげんととうもろこしのスープ。コロコロに切って、とうもろこしと粒のサイズを合わせたいんげんをとうもろこしと一緒に加熱します。
そして、みなさんの好きなコーンポタージュ、実はこのスープにひと手間で、簡単にできるんです。出来上がったスープに、ハンドブレンダーをかけるだけ。
つぶつぶコーンポタージュ。裏ごししたなめらかなコーンポタージュとは違う、とうもろこしの味がしっかりと味わえる美味しいポタージュになります。
くわしいレシピをこちらのnoteの記事にアップしていますので、ぜひ合わせてご覧ください。
自然の恵みをそのまま噛みしめるような、幸福感たっぷりのコーンスープ。旬の間にたっぷりと楽しんでください。
スープのレシピや研究成果を発表している有賀さんのnoteはこちら!