お金持ちが幸せとは限らない理由
富と幸福の関係を、さまざまな研究成果から考察する。多くの研究に共通しているのは、富裕者は「他者と心理的・物理的に距離を置きたがる」という現象だ。
「貧乏も経験したし、金持ちも経験したけれど……やっぱり金持ちのほうがいいわね」
コメディアンのソフィー・タッカーはかつて、冗談めかしてこう言った。
タッカーの意見には一理ある。他の条件がすべて等しければ、お金は多いほうがいい。その理由は、エリザベス・ダンとマイケル・ノートン両教授が、非常に有益な共著『「幸せをお金で買う」5つの授業』で指摘している通りである。お金があれば、幸福度を高めてくれる諸々の製品、体験、サービスにアクセスできるからだ。
とはいえ、裕福な人ほど幸福というわけではない事実を示す研究結果も、次々と示されている。その一因として、人は裕福になると、金銭と振る舞いの両面で寛大さを失うようである。
カリフォルニア大学バークレー校のポール・ピフらによる、一連の研究結果を見てみよう。ある実験では、参加者たちをペアにしてモノポリーのゲームをしてもらった。ゲームはあらかじめ、参加者の一方が、短時間で対戦相手よりもはるかに裕福になるよう仕組まれている。そして研究チームはマジックミラー越しに、参加者の振る舞いを観察した。
その結果、富を増やしていく参加者ほど、次第に意地が悪くなることが判明した。たとえば、より尊大な姿勢や仕草を見せ始め、貧しい対戦相手に見下した態度で話し始める。また、平等に分け合うよう1つのボウルに盛られたプレッツェルを、裕福な参加者のほうが多くつまんだ(これらの様子はピフのTED動画を参照)。
別の実験でも、同様の影響が明らかになっている。参加者に10ドルを与えて、その一部または全部を他の参加者に寄付できると告げた。すると金持ちの参加者が寄付した額は、平均44%少なかった。
研究室の外の世界でも同様だ。『クロニクル・オブ・フィランソロピー』誌の報告によれば、富裕者ほど所得に占める慈善寄付の割合が低い傾向にある(英語記事)。
このことは、個人の幸福にも重要な意味合いを持つ。20万人以上から回答を得た大規模な研究の結果によれば、対象国の実に93%(136ヵ国のうち120ヵ国)で、「寛大になること」が個人の幸福にプラスの効果を及ぼしているからだ(英語論文)。
また、ノートルダム大学の研究チームは、寛大さを示す複数の指標(寄付、ボランティア活動、精神的に友だちを支えることなど)と幸福度の関係について調査した。その結果、寛大な人ほど、自分はより幸福であると報告した(英語記事)。
研究者らは次のように理論を導き出している。すなわち、裕福になると寛大さが失われる理由は、富が孤立を促すからである。そして、孤立は幸福度を低下させる、と。
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