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【戦後71年】
「ヒトラー率いるナチスでも弔う」敗戦国ドイツの戦没者遺骨収集 イデオロギーに左右されぬ尊厳重視の文化
敗戦国の兵士はすべて悪なのだろうか。第二次大戦の終結から71年がたった今も、戦没者全体の半数近い113万人分の遺骨が外地に取り残されている日本。今年4月には、ようやく遺骨収集を「国の責務」として強化する法律が成立し、8月15日の全国戦没者追悼式では、「希望に満ちた国の未来を切り開く」と誓った安倍晋三首相が遺骨収集事業への強い意欲を示したが、現時点ではまだ事業が積極的に進んでいるとは言い難い。一方、日本と同じ敗戦国・ドイツでは、97年前に設立され、政府の委託を受けた民間団体「ドイツ戦争墓地維持国民同盟」(VDK)が今も兵士の亡きがらを探し、欧州各地で墓地の整備を進めている。寄付金と延べ1万人ものボランティアに支えられた活動エリアは45カ国に上る。日本と同様、「戦争責任」を問われ続けてきたドイツ。それでも団体関係者は「ナチス・ドイツの兵士、たとえ親衛隊(SS)でも墓を持つ権利はある」と明言、活動を続けている。
旧ソ連軍との攻防戦の〝爪痕〟
さびた金属製の鉤(かぎ)十字(ハーケンクロイツ)、旧ドイツ空軍の記章、ナチスの紋章が刻まれた陶器の破片…。ドイツ東部・ハルベにあるVDKブランデンブルク州支部には、同国の「負の歴史」を伝える品々も並んでいる。
「周辺で見つかった旧ドイツ軍の遺品です」。オリバー・ブライトハウプト支部長(49)はこう言ってため息をついた。
「各地からコレクターや売買目的の悪質な業者が、金属探知機を持ってこうしたものを探しにやってくる。困ったものだ」
首都ベルリンの南東50キロにあるハルベでは、第二次大戦末期の1945年4月末、ベルリン陥落を目指す旧ソ連軍とドイツ軍が激しい攻防戦を繰り広げた。
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