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年金の運用 不安解消に議論尽くせ

 年金が不安だと言う人は多い。年金積立金の運用で多額の損失を出したと聞けばなおさらだろう。政府は臨時国会に無年金者を救済する法案などを出す予定だ。複雑な制度や運用について理解する良い機会である。若年層が安心して年金に加入できるよう議論を尽くすべきだ。

     「私たち若者にとって、年金とは負けることの分かっている試合のようなもの」。毎日新聞に掲載された25歳の会社員の投書だ。少子高齢化で年金受給者が増え続け、保険料を払う人は減っていく。払った分だけ年金を受け取れない「負け試合」と思う若者は多いだろう。

     しかし、基礎年金の半分は税から充当され、厚生年金は労働者と会社が半分ずつ保険料を出している。個人で積み立てるよりはるかに有利ではある。自分が何歳まで生きるか誰にもわからず、どれだけ積み立てればいいのかもわからない。こうしたリスクを考えると公的年金はやはり必要な制度と言える。

     さらに、年金積立金は現在約130兆円もあり、少しずつ取り崩しながら将来の支給に充てることになっている。これまでの世代が納めた保険料による積立金である。若年層は損ばかりしているわけではない。

     ところが、この積立金の運用が2015年度に5・3兆円の損失を計上した。今年4〜6月も5・2兆円の損失となった。それが人々の不安をかき立てているのだ。

     公的年金の運用は14年10月に、それまで12%ずつだった国内、外国株式の割合を計50%まで増やした。しかし、中国の景気悪化、イギリスの欧州連合離脱の国民投票の結果などの影響で株安・円高となり、赤字幅が大きくなった。

     安倍政権がアベノミクスのために株価を下支えしようと株式運用を増やし、これが国民の財産である年金積立金に巨額の損失を出したと、野党は批判する。

     一方、政府は運用成績はその時点における資産の評価額に過ぎず、実際に売買して損失を出したわけではないと説明する。株価が上がって運用益が出ればカバーできるというわけだ。実際、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が発足した06年度からの通算成績では26兆7640億円の黒字となっている。

     ただ、運用損が膨らむと将来の給付水準が下がることにつながり、やはり若年層にしわ寄せが行くことになる。このまま赤字が続けば国民の不信はさらに募るだろう。

     若年層が安心して年金に加入しようと思えることが大事だ。株式の運用比率を高めたことの是非を含めて、国民が納得できるよう、臨時国会で活発な論戦を期待したい。

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