これまで70年にわたり社会主義の看板を掲げながら封建的3代世襲体制を続けてきた北朝鮮の金氏王朝が、今最大の危機に直面している。その大きな理由は、いわゆる最高尊厳(金氏)の信任を受け資本主義国家でその役割を果たしてきたエリート外交官たちの亡命が相次いでいるからだ。もちろん外交官の亡命自体は以前からあったが、最近は外交官の中でも非常に高い地位にある者の亡命が目立つ。これは北朝鮮体制の内部で深刻な亀裂が生じていることの裏付けでもある。
金正恩(キム・ジョンウン)政権は以前にはなかった三つの大きな危機に直面している。その中で最も重大な問題として挙げられるのは、金正恩氏自らのリーダーシップの危機だ。金正恩氏の行動は今やほぼ「狂人」のレベルといっても過言ではない。例えば金正恩体制になってからすでに70人以上の幹部が高射機関銃によって処刑され、遺体が跡形もなくなってしまったことなどその端的な例だ。かつての金日成(キム・イルソン)主席や金正日(キム・ジョンイル)総書記は、重要な政策決定を下す場合は必ず参謀や専門家の意見を聞き、部下の管理も徹底して行っていた。絶対君主の国では遠くにいる民衆よりも、側近を管理することの方が重要だからだ。ちなみに金正日総書記が側近を徹底して管理し権力を維持してきたことも広く知られている。金正日総書記の時代、人民に対する公開処刑はたまに行われることもあったが、幹部の公開処刑は非常に珍しかった。
ところが金正恩氏の時代になると状況は一変した。金正恩氏の叔父に当たる張成沢(チャン・ソンテク)元国防副委員長の生前であれば、彼がある程度ブレーキをかけることはできただろうが、その処刑後は誰も金正恩氏を制止することはできなくなった。ちなみに金正日総書記は1994年にはすでに核実験の準備を終えていたが、実際に核実験を行ったのはそれから12年後の2006年になってからだった。国内外の状況を慎重に見極めた上での判断だったのだ。これに対して16年1月に行われた4回目の核実験は、北朝鮮では誰もがそのリスクについて理解していたはずだが、結局は金正恩氏一人の決定によって強行され、結果的に世界が北朝鮮に制裁を加える状況を招いてしまったのだ。