2016年9月9日(金)、9月10日(土)の2日間「第6回きりゅう映画祭2016」が群馬県桐生市の桐生市市民文化会館で行われる。
映画祭で上映される問題作
10日の「きりゅうシネマ2016」で上映される映画『堕ちる』は、無口で真面目な熟練の織物職人がふとしたきっかけでローカル地下アイドル「めめたん」にハマってしまうというストーリーだ。
秋葉原で活動する地下アイドルのファンには中年男性も少なからず存在しているという話を思い起こさせるが、堅いイメージのある職人とアイドルという組み合わせのストーリーが、桐生でどう展開されるのか。
監督・脚本を担当した村山和也監督に話を聞いた。
監督生命をかけて制作
村山監督はこれまでCMや乃木坂46・NMB48などのアーティストのMV制作を行う映像ディレクターとして活動、ニューヨーク市立大学在学中に短編映画を制作した経験を持ち、日本で制作したのは今作品が初という。
一応、映画愛はかなりありまして、PVやってる人が企画先行で撮ったみたいな映像重視の映画にはなってないはずです。
これから映画を継続してやっていきたく、監督生命をかけて制作しました。
と、作品への強い思い入れを語った。
2人のキャスティングについて
織物職人の耕平を演じるのは中村まこと。劇団「猫のホテル」創設メンバーで看板役者。
多数の劇団公演やプロデュースで活躍し、観客を惹きつけ続けている俳優だ。
地下アイドル「めめたん」役は錦織めぐみ(@memetan_0705)。
アイドルグループLuce Twinkle Wink☆のメンバーとして活動する現役アイドルだ。

Twitter/@memetan_0705
村山監督はキャスティングについてこう語る。
見た目のストイックなイメージですごくしっくりきました。
舞台で長く活躍されている方なので、ほとんどセリフが無い役でも大丈夫だと思いお願いしました。
ヒロインの錦織めぐみさんは、役名でもある、”めめたん”という愛称があり、その言葉の響きがとても気に入っていたのと「錦織(めぐみ)」と、織物に縁のある名前なのでいいかなと。
彼女のグループのPVを撮影した時に、ソロで光る印象があったので、彼女以外いないなと思ってお願いしました。
織物とファッションの街・桐生をテーマに
桐生市は1300年の歴史を持つ絹織物「桐生織」を特産とする街であり、ファッションの街でもある。
村山監督は本作の脚本執筆のために桐生を訪れ、街の様子から着想を得た。
シナハンに行った際に街を歩くと洋服屋さんがとても多く、ファッションの街ということで、服をテーマにしたいと思いました。
また、今まで自分がやってきた仕事と絡めたいなということで、PVを撮影したことのあるアイドルに出演してもらいました。
織物職人の耕平は「めめたん」のために桐生織のステージ衣装を作ることになる。
衣装デザイナーの鈴木亜香弥さんが制作した桐生織は芸術的で美しいと村山監督も絶賛する。
劇中でめめたんが歌うオリジナル曲「wonderland」は音楽家の前口渉さんが作曲。
前口さんは村山監督の中学時代からの友人であり、感慨深いという。
このほか、映画に登場するめめたんグッズや市民エキストラなど、多くのものが桐生市民や映画祭の関係者からの協力を得て作られた。
古きよき織物工場や理髪店など、舞台である桐生の街の風景も耕平の心情とうまくマッチしているのも印象的だ。
「堕ちる」に込められた意味
タイトルの「堕ちる」には堕落するという意味だけでなく「恋に落ちる」という意味など、様々な意味が含まれている。
ひたすら仕事に打ち込む職人という存在は、堅い人物であるというイメージが強い。
そんな人物がアイドルにハマり、堕ちる姿を観たいという思いがあったという。
また、本作品のストーリーの中には、村山監督が自身を投影している部分があると話す。
職人のように頼まれた映像の仕事をひたすらやっていて、何かきっかけが欲しいという心境で、美容室でシャンプーしてくれた女の子に会って人生観が変わるような衝撃がありました。
ほとんどしゃべらない主人公の耕平という名前は、一緒に暮らしていたのに一度もしゃべったことのない叔父さんからとっているので、非常に個人的な映画でもあります。
最後に映画の見どころについて語ってもらった。
衣装、音楽はもちろん、終盤のあるシーンからの、主人公の耕平のセリフが唯一のセリフなので、そこはぜひ観て欲しいです。
真面目な人ほど何かにハマると大変なことになるもの。
耕平が“めめたん”に作った衣装と、そこへ込められた思いはどこへ行くのか。実際に観て確かめて欲しい。
『堕ちる』はきりゅう映画祭「きりゅうシネマ2016」作品として9月10日(金)に上映。
舞台挨拶には「めめたん」錦織めぐみが登場する予定。
「きりゅう映画祭2016」
9日は応募された短編映画の中から優秀作を選ぶ「きりゅうアワード2016」、10日は地元の小学生が映画を制作する企画「キッズ・ザ・ムービー」と、桐生市・みどり市の魅力を打ち出し、地元市民協力のもと制作した短編映画を上映する「きりゅうシネマ2016」が行われる。
チケットは前売り券各日500円、チケットぴあなどで販売中。
詳細はきりゅう映画祭のWebサイトを確認してください。※『堕ちる』の上映は9月10日(金)のみ。