五輪招致の疑惑 お手盛りのJOC調査
これでは疑惑は残ったままだ。
2020年東京五輪・パラリンピックの招致活動を巡る不正疑惑について検証していた日本オリンピック委員会(JOC)の調査チームが報告書を公表した。
開催都市決定の投票権を持つ国際オリンピック委員会(IOC)委員に対するロビー活動のため、東京の招致委員会がシンガポールの会社と結んだコンサルタント契約に違法性はなく、五輪関係者への贈与を禁止したIOCの倫理規定にも違反していないとする内容だ。
弁護士を座長とするJOCの調査チームは国内外の30人以上の関係者から聞き取りなどを行った。招致委の幹部は約2億3000万円のコンサルタント料は票集めの賄賂だったのではないかという疑惑を否定したうえで、何に使われたか把握していないと答えたという。
しかし、使途の解明につながる3人から協力は得られなかった。コンサルタント会社代表のイアン・タン氏、長年IOC委員を務め、国際陸上競技連盟会長でもあったラミン・ディアク氏、ラミン氏の息子パパマッサタ氏だ。タン氏とパパマッサタ氏は親密な関係とされる。
報告書によると、13年5月下旬、タン氏から招致委に売り込みがあり、五輪をはじめ国際的なスポーツイベントの開催などで幅広い人脈とノウハウを持つ大手広告代理店の電通に照会したうえで契約を結んだ。タン氏は陸上の世界選手権招致で実績があり、国際陸連関係者への働きかけを期待したという。
招致委は7月に約9500万円、東京開催が決定した後の10月に成功報酬として約1億3500万円を送金した。コンサルタント会社が提出した報告書にはどこにいくら支払ったかの記述はない。コンサルタント料はタン氏を通じてラミン氏側に渡り、賄賂として使われたのではないかとの疑惑は解明されていない。
にもかかわらず、JOCは「疑念は払拭(ふっしょく)された」として再調査は行わない方針だ。JOCの竹田恒和会長は大会組織委員会の森喜朗会長らに報告したが、異論は出なかった。
招致に成功したからといって、目をつむるというわけにはいかない。
招致疑惑はロシアの陸上選手の組織的なドーピング(禁止薬物使用)違反のもみ消し工作が明らかになる過程で浮上した。ラミン氏は収賄などの容疑をかけられ、国際陸連から永久追放処分となったパパマッサタ氏は国際指名手配中だ。
フランスの検察当局は汚職や資金洗浄の疑いで捜査を進めており、2億円超のコンサルタント料が不正な資金と認定される可能性も残されている。これで幕引きとはいかない。