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 西日本の玄関口・関西空港の従業員に、はしか(麻疹)の感染が広がっている。8月下旬以降、急速に増え、国際線チェックインカウンターで働く人を中心に従業員の感染者は計31人に上る。はしかの感染力は強く、空港運営会社や大阪府はさらなる拡大の防止に力を入れている。

 「日本の主要な玄関口の関空は特に注意が必要な場所」と府幹部は懸念する。お盆前後は関空の出入国者が1日平均6万人に上る繁忙期。「客と近い距離で接する従業員が感染しており、厳重に対応している」。運営会社の関西エアポートの利用者向け専用電話(072・455・2288)には2日時点で約260件の問い合わせがあるという。

 厚生労働省によると、まず7月31日に関空にいた少なくとも4人が8月10日前後にはしかを発症。3人は19歳~30代前半の利用者で、残る1人が20代前半の関空の女性従業員だった。

 関西エアや府によると、女性従業員は9日に発熱し、二つの医療機関を受診したが特有の発疹がなく、はしかと診断されなかった。熱が下がったため13日に出勤。その後発疹が出て、17日に4カ所目の病院ではしかと判明した。

 はしかは熱やせきなどの症状が出た後、一度熱が下がり再び発疹と高熱に襲われる。麻疹ウイルスで引き起こされ、空気、飛沫(ひまつ)、接触で感染し、感染力は非常に強い。手洗いやマスクのみで予防できず、ワクチンが有効とされる。ただ、昨年3月に世界保健機関(WHO)西太平洋地域事務局から日本が麻疹の「排除状態」にあると認定され、国立感染症研究所によると、昨年の発症者は35人だった。近年の患者は海外から持ち込まれたウイルスによるものという。

 関西エアによると、18日以降、従業員に体温を測り熱があれば出勤しないよう徹底。だが8月下旬から20代と30代に発症者が相次ぎ、2日までに男女計31人に感染が確認され、さらに10人前後に感染の疑いがある。同社幹部は「エボラ出血熱などは水際対策を徹底してきたが、はしかは盲点だった」と悔しがる。女性従業員について「熱がある日はきちんと休んでいたのに」と話す。

 どこから関空内にはしかが入ったかはわかっていない。7月31日に関空にいた女性従業員と利用者3人のウイルスの遺伝子型は中国で流行するものと同じ型だった。はしかの潜伏期間は10日程度とされ、発症が8月10日前後だったことから考えると、4人は7月31日に関空を利用した別の人から感染した可能性がある。

 感染がさらに広がらないかが関係者の最大の懸念だ。7月31日に関空を利用した兵庫県内の19歳男性は8月14日、千葉市の幕張メッセでのコンサートに参加。その5日後にはしかとわかり、家族4人も感染したという。因果関係は不明だが、会場にいた2人の感染も確認されている。8月26日には、東京都立川市でのアニメのイベントにも別のはしかの感染者が参加し、都が注意を呼びかけている。

 8月下旬に発症した関空の従業…

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