学生時代は15万円で1ヶ月半、貧乏旅行したりした。飛行機代が5万円とすると1日2000円で過ごしたことになる。宿代を含めて。
社会人になってあまり旅行でお金を気にしなくなった。好きなものを食べて、買う。好きなことをしてるのだがなんか味気ない。
お金の自由(学生時代比べ、であり裕福ではない)は貧乏旅行で楽しかったギリギリのお金の範囲で楽しむ自由を奪っていた。
よし!今日は1日500円で楽しみまくるぞ!
僕はポケットに500円玉だけ入れて家を出た。天気がよい。ママチャリを漕ぎながら鼻歌を唄う。「リンダリンダー、リンダ…」
喉が渇いたので100円ショップに入りミネラルウォーター(富士天然水)を買う。108円也。1日分なので、少しずつゆっくり飲む。
「もしも僕がいつか君と出会い話し合うならそんな時はどうか愛の意味を知って下さいー、リンダリンダー、リンダリンダー」
誰もいない田舎道を走り周ると汗が吹き出てたまらない。ミネラルウォーターを飲み終わってしまった。「リンダリンダー…けほ」
声が擦れ頭がクラクラしてきた。熱中症?
ヤバい。ぐらっと身体が傾くのを感じた。僕はここで干からびて死ぬのかな?あーあ。
ピカピカッ!ドカーン!
世界が暗転して、空から天使が降りてきた。
僕はどうやら天に召されるらしい。美しい金髪の天使が僕の頭の中に囁きかけてくる。
『お前は見た目を飾ることをせずに、必死に生きてきた。次に生まれ変わる時には、ドブネズミにしてやる、ところで、おぬし』
『ふぁい?』僕は頭の中で答えた。
『リンダというのは、おぬしのフィアンセか何かなのか?』天使は長い金髪を指でクルクルと巻きつけながら伏し目がちに言った。
『はぁ、なんでですか?』
『おぬしが何度も叫んでおったからじゃ』
『いや、彼女なんていないっす、なんで?』
『なら、私に愛とやらを教えてくれないか』
『僕は、ドブネズミになるんでしょう?』
『ならない。というか、おぬし相当にぶいか、失礼なやつじゃな! 私の名前を何度も呼んでおいて……。助けにきてやったのに』
『君の名は?』僕は思わず聞いた。
『リンダ=ミネラルウォータ=リンダじゃ』
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