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【社説】

概算要求101兆円 財政規律のタガ外れる

 二〇一七年度予算の概算要求総額は百一兆円と三年連続で百兆円を超えた。日銀のマイナス金利により借金の利払いが減るとして財政規律のタガが外れた格好だ。こんな危機感のなさで大丈夫か。

 不人気な増税を先送りしたうえ景気停滞で税収増も見込めないのに、大盤振る舞いは止められない。頼みは異常な低金利−。積極財政路線といえば威勢が良いが、実態は日銀を従属させ財政と金融の一体化で成り立たせている危うい予算構造である。

 もちろん各省の要求に対し財務省が絞り込むが、大きな期待はできまい。かつてのように厳格な要求上限を設けるでもなく、ほぼ青天井に要求を認めるぐらいだからだ。数兆円削減したとしても、それを補正予算で「復活」させる例が少なくない。官邸主導で進む安倍政権の予算は、財政健全化の視点が欠けているかのようである。

 大義のない消費税の増税を見送ったのは当然だが、税収増が見込めないのだから大型予算など論外のはずだ。要求基準を厳しくし各省庁の要求段階から減額させるべきだった。

 しかし、逆に「低金利環境を最大限に生かす」との掛け声のもと、厚生労働省三一・一兆円、防衛省五・一兆円、内閣府二・九兆円など過去最大の要求額が並んだ。公共事業も前年度当初予算比16%増の六兆円超、「第二の予算」といわれる財政投融資は十六兆円台と四年ぶりの増額要求だ。

 無駄な公共事業を生むとして減額続きだった財投を増やし、中身もJR東海のリニア中央新幹線大阪延伸前倒しに三兆円を充てる。民間企業に直接貸し付けるのは初めてで「何でもあり」のようだ。

 低金利で利払い費は一兆円程度の圧縮を見込むというが、それは焼け石に水だ。借金依存を続ける結果、国債発行残高は一七年度には本年度より約二十兆円増の八百六十兆円台にまで膨らみそうだ。

 そもそも百兆円規模の予算は税収で賄えるのは半分だけだ。税外収入を充て、残る四十兆円は借金(国債発行)に頼る構造だ。日銀がその倍の八十兆円の国債を毎年、市中から買い取る異次元緩和で財政を実質的に支えている。禁じ手の財政ファイナンスとの批判が絶えないが、それも市中の国債が少なくなり、限界に近づいているのである。

 緊縮予算を求めているのではない。景気刺激も所得再分配も必要で、それを優先させるには徹底的な無駄の排除が欠かせないのだ。

 

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