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【コラム】「政治科学小説」からインスピレーションを得よう=韓国(1)
2016年09月02日16時36分[ⓒ 中央日報/中央日報日本語版]
イラスト=キム・フェリョン |
米国には「政治科学小説」を正規科目として開設した大学もある。その講義の目標は、政治科学小説から今日の政治を読解して未来を準備するのに必要なインスピレーションを得ることだ。主流の社会科学や哲学ができない機能を政治科学小説が遂行する点に着眼した科目だ。単位を取得するために読む政治科学小説には例えばこういうものがある。投票する日だ。その国のその時代では選挙をわずか1人の個人がする。全体の有権者を代表して、ただ一人の有権者が投票する。コンピューターが有権者として最も適した1人を選定する。
「米国の人たちも本当にふざけた人たちだ」という反応が出るかもしれないが、多くの病理的な問題点にもかかわらず米国が世の中を支配する理由はやはりこうした「しない理由はない」という「Why not」精神ではないだろうか。シリコンバレーの力は幻想・妄想・空想・想像から出るのではないだろうか。
そうだ。小説は虚構だ。しかし虚構には未来を提示する力がある。言葉が種になるように、想像も種になる。一種の科学小説とも見ることができる英国政治家トマス・モア(1479-1535)の『ユートピア』(1516)には財産を共有する政体が出てくる。惨憺たる結果を生んだが、20世紀の共産主義はこれを実際に実験した。
英国の作家ジョージ・オーウェル(1903-50)は『1984』(1949)で、当時すでに始まった全体主義傾向が未来に深化する可能性を警告した。1984年までに全体主義社会が到来しなかった理由はオーウェルの警告も一助した。マルクス(1818-1883)の思想も未来の社会主義社会を描いた「政治科学小説」と見ることができる。オーウェルとマルクスは「逆説的」に全体主義が到来せず資本主義が滅びない道を提示した。
政治科学小説は結局、大きく2種類だ。ディストピアか、ユートピアだ。ディストピアは「政治地獄」、ユートピアは「政治天国」だ。政治科学小説は、人類の未来で最悪のシナリオを避けて最上のシナリオが現実化するかもしれない選択のスペクトラムを提示する。人工知能(AI)が遂行する全面的な「民間人査察」のおかげで犯罪が消え、「不正請託及び金品等授受の禁止に関する法律」(金英蘭法)が必要ない世の中がくるかもしれない。AIが支配する世の中を描いた政治科学小説がそのような可能性に備えるのに役立つ。
政治科学小説はこうした現実的効用性だけでなく、とにかくおもしろい。『ユートピア』 『1984』は風刺小説だ。風刺は「現実の否定的な現象や矛盾などを何かに例えたりしながら嘲笑的に表す」ものだ。政治科学小説には苦々しい高級ユーモアがある。
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