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コリア・ITが暮らしと経済をつくる国

韓国の伝統女子大で起こった「ITデモ」

リーダーなき集団行動はIT世代の象徴

趙 章恩 [ITジャーナリスト]
【第11回】 2016年9月2日
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韓国の梨花女子大学で、学生による大規模なデモが起こった。新設学部設立反対を訴え、1万人の学生と卒業生が参加したこのデモは、学生と卒業生だけが利用できるコミュニティサイト上で、時間を掛けた議論の下に実施されたことが話題になった。

韓国屈指の女子大で
学生200人が立てこもり 

韓国の伝統女子大・梨花女子大学でIT通して集まった学生と卒業生が、大学にNO!をつきつけた(写真はイメージ) pixta_21401926

 韓国屈指の歴史ある女子大・梨花女子大学で7月28日、学生と大学当局が対立、200人を超える学生らが大学本部棟に立てこもり、長期にわたる大規模なデモ行動を行った。

 学生側の要求は、韓国教育部(注1)と大学が一方的に進めた「未来ライフ大学(=学部)設立」の白紙撤回と総長の辞任である。

 未来ライフ大学は、商業高校を卒業した会社員、または30歳以上の無職の女性が、面接だけで梨花女子大学に入学できるという新制度を活用した、社会人向けの新設学部だ。夜間講座やインターネット講座を3年ほど受講し、認定を受ければ学位が授与される。

 健康とファッションを専攻するウェルネス学科、コンテンツの企画・制作を専攻するニューメディア学科を、それぞれ2017年に開講する計画だった。

 おそらく、ここまでの規模のデモは、同大学130年の歴史の中で初めてのことだろう。そもそもの発端は、同大学の現役学生と卒業生が参加するコミュニティサイト「イファイアン」での、未来ライフ大学に関する議論だった。

 イファイアンは大学のサイトではなく、2001年5月に当時の学生が立ち上げたもので、在学生と卒業生のためのコミュニティサイトとして在校生が代々運営を引き継ぎ、寄付金や広告掲載で運営費を賄っている。

 コミュニティサイトではあるが、学生らが企画して取材した記事も掲載され、社会問題、就活を控えた学生向けの各界専門家インタビューなど、コンテンツは充実している。

 だが、中でも多くの学生や卒業生が訪れるのは、「秘密の花園」だ。


注1 教育部:韓国政府の教育担当行政機関。「部」は日本の「省」にあたる

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趙 章恩 [ITジャーナリスト]

ちょう・ちゃんうん/韓国ソウル生まれ。韓国梨花女子大学卒業。東京大学大学院学際情報学修士、東京大学大学院学際情報学府博士課程。KDDI総研特別研究員。NPOアジアITビジネス研究会顧問。韓日政府機関の委託調査(デジタルコンテンツ動向・電子政府動向・IT政策動向)、韓国IT視察コーディネートを行っている「J&J NETWORK」の共同代表。
IT情報専門家として、数々の講演やセミナー、フォーラムに講師として参加。日刊紙や雑誌の寄稿も多く、「日経ビジネス」「日経パソコン(日経BP)」「日経デジタルヘルス」「週刊エコノミスト」「ニューズウィーク」「リセマム」「日本デジタルコンテンツ白書」等に連載中。韓国・アジアのIT事情を、日本と比較しながら分かりやすく提供している。


コリア・ITが暮らしと経済をつくる国

韓国の国民生活に、ITがどれほど浸透しているか、知っている日本人は意外に少ない。ネット通販、ネットでの納税をはじめとする行政サービスの利用、公共交通機関のチケットレス化は、日本よりずいぶん歴史が古い。同時に韓国では、国民のIT活用に対する考え方が、根本的にポジティブなことや、政府が規制緩和に積極的で、IT産業を国家の一大産業にしようとする姿勢などが、IT化を後押ししていることも事実である。

一方の日本は、どうして国を挙げた大胆なIT化の推進に足並みがそろわないのか。国民生活にITが浸透している韓国の先行事例を見ながら、IT化のメリットとリスクを見極めていく。

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