調査が難航したのはわかる。だとしても、これで人々の理解を得られるとは思えない。

 2020年東京五輪・パラリンピック招致の際にシンガポールのコンサルタント会社に2億3千万円が支払われた問題で、日本オリンピック委員会(JOC)の調査チームが報告書を公表した。日本側に買収などの意図はなく、違法性はなかったという内容である。

 だが2億円余の使い道は明らかになっていない。当時、開催都市決定の投票に影響力を持つ国際オリンピック委員会(IOC)委員だった国際陸連前会長や、コンサルタント会社と関係があったとされるその息子にもアプローチしたが、協力は得られなかったという。ほぼ日本側関係者からの聞き取りに頼った結論で、全容解明にほど遠い。

 この問題は、フランスの検察当局が捜査を続けており、状況によっては新たな局面を迎える可能性もある。

 今回浮き彫りになったのは、コンサルタントといわれる人たちの活動の不透明さであり、それを選び、契約する招致委側の管理態勢の甘さである。

 招致委幹部は、問題のシンガポールの会社について独自に情報を持っていなかった。国際スポーツ界でマーケティング活動をする電通の勧めがあったとはいえ、そのような相手に巨額の金を支払った。

 20年招致ではこの会社を含めて11の、リオデジャネイロに敗れた16年招致のときは約30のコンサルタントと契約を交わした。契約料に相場はなく、先方の言い値になることが多いといわれる。20年招致では計11億数千万円が支出されている。

 契約したコンサルタントがどんな役割を担い、どんな仕事をしているかは、一部の幹部しか把握していなかったという。

 立候補都市がIOC委員と接触する方法が限られ、コンサルタントなくしては五輪を呼べないという現実があるとはいえ、出費に見合う契約かどうか、慎重に判断する自覚と責任が招致委幹部にはある。

 IOCは24年五輪招致から、契約するコンサルタントの登録を義務づけたうえで公開し、コンサルタントには招致ルールの順守を宣言することを課す。改革の一歩といえる。

 五輪は招致や開催費用の高騰が疑問視されている。それでも社会の関心は高く、大会を心待ちにする人は多い。その行方が、見えないところで見えない人たちによって左右される。こんなことを続けていては、やがて輝きは失われてしまう。