〈貧しさは時に罪なき子を叱り〉との川柳がある。ままならない暮らしにいら立つまま、子を叱ってしまった。情けない振る舞いを悔いる親の姿が浮かぶ
▼さまざまな辛(つら)さを重ねている人たちを、さらに暗い気持ちに陥れる風潮が社会を覆っている。NHKのニュースで「子どもの貧困」を特集したところ、実名で窮状を話した高校生に対する、バッシングがネットで“炎上”した
▼女生徒の部屋にアニメグッズがあった、千円のランチを食べたなどとあげつらう。「本当に貧困なのか」「甘えているだけでは」といった、悪意の声が巻き起こる
▼よってたかってのバッシングに、片山さつき参院議員も加担した。生徒の生活に「あれっと思う方もいらっしゃるでしょう」と同調し、「NHKに説明を求め、皆さんにフィードバックさせて頂きます!」ともコメントしている
▼日本の「相対的貧困率」は16・1%で、6人に1人が貧困という深刻さで、先進国の中でも最悪のレベルである。政策で対処すべきテーマで、特に政治家には心に刻んでほしい問題である
▼当事者の生活の一場面、言動の一部を切り取って論評し、あたかも完璧な貧困者でないと許さないかのような社会は、病んでいよう。十分な貧困対策をせず、問題をすり替えるのはもうやめて。そう叱るのが大人であろう。(宮城栄作)