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漁獲規制先送り 米、日本案に反対

クロマグロ規制をめぐる対立の構図

 北太平洋クロマグロの資源管理について話し合う中西部太平洋マグロ類委員会(WCPFC)は2日閉幕し、焦点となっていた生後1年未満のクロマグロの減少時に発動する緊急規制ルールの具体化を見送った。日本は資源量が3年連続で低水準になったときの発動を提案したが、より厳しい管理を求める米国の反発などで結論を先送りした。来年夏の委員会での合意を目指すが、規制内容が強化される可能性が高まっている。【寺田剛、小原擁】

     「合意を1年先送りする。日本の提案内容も変える」。水産庁の太田慎吾審議官は委員会終了後の会見で、合意先送りを残念がった。日本は国内の漁師やマグロ業者に配慮し、漁獲の継続を重視する主張を貫いてきたが、今後は、一時的な禁漁など、より厳しい規制案の作成を迫られる可能性がある。

     福岡市で先月29日から開かれた会合には、日米や韓国、台湾など10カ国・地域のうち、フィリピンを除く9カ国・地域が参加。日本は、生後1年未満のクロマグロの資源量が、3年連続で過去最低水準の約450万匹(1992〜93年)に低迷した場合のみ、2年間の緊急規制ルールを発動することを提案した。

     だが、太平洋でのクロマグロ漁に従事する漁師がほとんどいない米国は、環境保護団体の主張を考慮し、「3年も待ったら、緊急発動とはいえない」などと反発。緊急規制ルールの発動を極力抑えたい日本と対立した。日本は会合の中で具体的な規制内容として、WCPFCが昨年から導入した「30キロ未満の小型魚の漁獲量を2002〜04年平均から半減する規制」より、漁獲量をさらに半減させる案を提示。緊急規制ルールの発動時に大幅に漁獲量を減らすことで、米国への歩み寄り姿勢を示し、米国側の譲歩を引き出そうと試みた。

     ところが、今度は「漁獲量をさらに半減させる」という日本の提案に、漁獲量を確保したい台湾が反発。加盟国間の温度差は一段と広がった。

     一方、米国が提案していた「30年までに親魚の資源量を14年の8倍弱となる13万トンに回復させる」との中期目標についても、時間切れで合意できなかった。

    保護強化の見方

     今回、緊急規制の具体化を見送った影響はどう出るのか。国際漁業資源に詳しく、委員会にもオブザーバー参加した学習院大法学部の阪口功教授は「合意の先送りは、将来の資源管理につけを残し、資源回復はより困難になる。また、委員会のガバナンス(統治)が利いていないと見なされれば、環境保護団体からも、日本はより厳しい目を向けられるようになる」と話す。

     漁業関係者や飲食店も合意見送りに落胆の声をあげる。産卵期(6〜7月)の親魚を自主禁漁している長崎県壱岐市のマグロ漁師、中村稔さんは、「3年連続で低迷した時のみの発動では、加盟国に理解されなかったのでは」と、日本提案の甘さを合意先送りの要因とみる。鹿児島市のクロマグロ料理専門店「黒・紋」の店主、安楽健治さんは「今回の合意見送りで規制が強化され、幼魚の供給量が減れば、マグロの仕入れ価格が高騰する」と心配する。

     一方、「2年間の漁獲禁止」を求めてきた環境保護団体のグリーンピース・ジャパンは、「水産庁に対し、引き続き保護措置の強化を要請していく」との声明を出した。61年に16万トンあった太平洋クロマグロの資源量は、14年には約1.6万トンまで激減しており、水産庁の太田審議官は「引き続き米国などと意思疎通を重ね、着実な資源回復を図っていきたい」と話した。

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