PCデポ社長、高齢者PCサポート事業への批判に答える
ピーシーデポコーポレーション・野島隆久社長インタビュー
高齢者のパソコンサポートサービスに対する高額の解約料をめぐり、批判を浴びるピーシーデポコーポレーション(PCデポ)。野島隆久社長が騒動について釈明した。(「週刊ダイヤモンド」編集部・大矢博之)
――高齢の利用者にそぐわない契約だったと批判されています。
1959年、神奈川県生まれ。桜美林大学経済学部卒業。82年、野島電気商会(現・ノジマ)入社。94年、ピーシーマーチャンダイズ(現・ピーシーデポコーポレーション) を設立し、社長就任
Photo by Toshiaki Usami
問題となった契約は、10台の端末をサポートするサービスでした。内容が過剰だとされていますが、お客様は10台のサポートではなく、「10台サポート加入者限定のiPadの優待」を希望されていたという経緯があります。現場の人間を擁護するわけではないですが、10台プランを推奨することは防ぎようがなかったと思います。
しかし、雑誌や映画コンテンツなどの付加サービスについては、iPadを使いこなせるようになってから加入することをおすすめするなど、違った対応もありえたかもしれません。
今回の契約は、初期費用がほとんど掛からず、端末代などを月々の利用料金で支払うコースで、解約料が高額になってしまうケースでした。結果的に、利用状況にそぐわないサービスの提供になったと認識しています。
騒動を受け、新規顧客には解約料などの契約内容について、時間をかけて説明することを始めました。契約内容を顧客が見たときに、分かりづらいことは事実だと痛感しています。特に、解約料が一目で分からないので、今後、見直す必要があると考えています。
契約中の約40万人の会員には「契約で不明な点はないですか」とダイレクトメールや電話での確認を進めています。その上で、来店していただいた会員の方には契約内容についての丁寧な説明を行い、疑問を一つ一つ解決していきます。
また、これまで、契約事項の説明は営業スタッフが担当していましたが、契約を確認する品質管理スタッフを新たに設け、営業の説明と、顧客の認識に齟齬がないかを確認する体制に改めました。
40万人の会員のうち
騒動による解約は1%以下
――騒動後、解約を希望する会員は増えていますか。
契約内容の説明を進める中で、「聞いていなかった」とコース変更や解約を決めた会員は実際に存在します。しかし、その割合は40万人の会員のうち1%以下です。平時でも0.7%前後の解約は起きていて、8月の解約率は1%程度になる見通しです。
――埼玉県の消費者団体から、契約内容に関する指摘を再三受けています。今回の騒動は防げたのではないですか。
社内の問題意識が低かったと言わざるを得ません。契約そのものが複雑だと、われわれも認識はしていました。ただ、これまでは契約内容を分かりやすくすることよりも、顧客に丁寧に説明することに力点を置いていました。
――高齢者をカモにしているというネガティブイメージがつきました。どう払拭していきますか。
丁寧に説明をしていくことに尽きると感じています。8月17日に発表した対応策で、75歳以上の会員は解約料を無料にしました。
わが社の会員のうち、75歳以上は全体の6.5%で、40台、50台のミドル・シニア層が中心です。今後、会員の契約内容について、結果的には使っていないサービスについては見直しを薦めることなどを通じて、信用を回復していくしかないでしょう。
われわれの技術者が、機器の初期設定をサポートする、サービスそのものへの疑義は少数だと感じています。問題となった複雑な契約体系が生まれたのは、2012年にタブレット端末がヒットしてからのことでした。それより以前の会員については、サービスの内容と、契約内容との間の認識の差はないとみています。
店や従業員の暴走ではなく
経営体制の問題
――店や従業員の暴走なのでしょうか。それとも、会社の運営体質の問題だったのでしょうか。
チームや店舗としての予算や、個々のサービスの予算は設定していますが、従業員一人一人のノルマはありません。
反省点は、契約が成立した後も、本当にそのサービスを使ってもらえているのかというところまで、数字で把握する仕組みがなかったことです。店や従業員の暴走ではなく、経営体制の問題で、経営者として至らなかった点が大きいと考えています。今後、改善していきたいと思います。
――第三者委員会に徹底的に調査してもらう考えはないのですか。
今回の件は、社外取締役と社外監査役にも報告しながら対応しています。社外取という外部の目がありますので、そこで適切な指導をしていただけると考えています。
――売掛金の割合が増加しています。成長しているサービス事業にリスクはないのですか。
サービス事業の売掛金の回収に関しては、過去も含めて焦げ付きは少ないです。われわれのサポートサービスは機器1台1台を技術者が設定し、顧客に渡すものなので、実際に使っている機器を突然返却して解約する会員が急増することは、さほど心配していません。騒動後に、実際に解約する会員が急増したわけでもありません。
売掛金の急増はここ2年のことで、一昨年以降、iPhone6や高額なタブレット端末を提供するサービスが増えたからです。端末代を3年かけてサポート代金として回収するモデルですので、あと1年経てば、売掛金と回収のバランスがとれてくる見込みです。
――騒動で株価が急落しています。株主へはどう説明していますか。
株主からも、ビジネスモデルに関して、多くの問い合わせがありました。ビジネスモデルそのものが「いかがなものか」と問う声や、分かりやすさや体制などの課題について、指摘をいただいています。
こうした声に対し、今後、高齢化社会が進み、パソコンを趣味とする高齢者が増えていくこともあるため、「ビジネスのニーズとアプローチに関しては自信がある」と回答しています。ただ、将来に向けて、現状のわが社のガバナンス体制やコンプライアンス体制のままでよいのかは、早急に検討すべきと考えています。
パソコンなどのサポートに対するニーズは、ここ数年で急速に膨らみました。今回の騒動への対応については正直、予測できなかった部分もあります。
とはいえ、サポートビジネスの説明の分かりやすさについては、対応が完全に後手に回りました。例えば、あるサポートサービスの契約を結ぶまでに、20カ所くらいサインする場所があります。過去のやり方の延長線上でビジネスを進め、分かりづらくなってしまったのは私の経営の問題です。
今後はIoTの時代が到来します。関連するIT機器も増えるため、このままでは契約事項も現在の何倍の量になってしまいます。そこも含め、見直す必要があると痛感しています。