ネコの性格もさまざまであり、おっとりしたネコもいれば、元気なネコもいる。ケンカ早いのもいれば、平和主義者もいる。
うちのセツシは暴力的である。とにかくオモチャを乱暴に扱って駄目にする。この家には先代の毛玉から、初音、影千代と使われてきたオモチャがあったんだが、セツシは家に来て一週間でこれをブッ壊した。あれにはおどろいた。他のネコたちはみんなで仲良く使っていたのに。
セツシがボコボコにした棒である。
残骸だけ見ると、猛獣を飼っているんじゃないかと思わされる。ライオン、あるいはゴリラ。そんなに穴だらけにしなくてもいいじゃないか。
ちなみに、鳥の羽根のオモチャは以下のようになった。
すべてむしられたわけである。
もはや純粋な棒、何の変哲もない一本の棒である。しかしセツシは羽根のなくなった状態でも遊んでいる。ホウキとだって試合ができると豪語したプロレスラーのように、一本の棒と揉みくちゃになるほど戦っているのだ。このネコは何なんだと思わされる。一本の棒に何を見ているのか。
前足でグワッと棒をつかみ、後ろ足でズガズガと蹴る。他のネコたちは無関心である。当然だ。しかし棒と戦っている最中に他のネコが通りかかれば、セツシはウーッとうなりはじめる。棒を奪われると思っているのだ。もちろん完全な思い込み。そんな棒、誰もほしがらない。これには三十六歳女性もあきれ顔。
そんなセツシだが、一方で忠犬のような習性もある。人間に棒を投げてもらうことが好きだから、くわえて持ってくるのだ。これは正直なところカワイイ。ネコというよりは犬のようだ。私が遠くに投げてやると、一人でダッシュして、つかみかかり、後ろ足でズガズガ蹴っている。結局最後はいつも、後ろ足でズガズガ蹴るしまつ。
一度、三十六歳女性の会社用のカバンにセツシが棒を放りこんでいたこともあった。三十六歳女性は一本のナゾの棒を持参して出社していった。帰宅後、やめてよと叱られていた。会社で見つけて恥ずかしかったらしい。セツシはめげずに走り回っていた。
私はこういう狂気スレスレの生き物は大好きだから、セツシを擁護するべく、「社長に投げてみたら、くわえてきたんじゃないか」と提案してみたが却下された。
クビになるとのことである。