はしか、感染拡大の恐れ 1週間で患者27人…関空から関東へ?封じ込め急務
強い感染力を持ち、高熱や発疹など重い症状が出るはしか(麻疹)の発症者が直近の1週間で30人近く報告されていることが1日、厚生労働省への取材で分かった。
8月24日までの患者数は32人だったが、この1週間で倍増し、昨年の年間患者数35人を上回るのは確実。日本は昨年、世界保健機関(WHO)から「はしかが排除状態にある」と認定されたばかりで、早期に封じ込めることが必要だ。
厚労省などによると、8月14日に千葉県の幕張メッセで行われた歌手、ジャスティン・ビーバーさんのコンサートを観覧した兵庫県の男性(19)がはしかに感染していたことが同月23日に判明した。ほかの観客2人にも感染が広がった疑いがある。
男性には海外への渡航歴があったが、男性がかかったのは中国で流行する型で男性の渡航場所と一致しなかった。国立感染症研究所(感染研)が調べたところ、男性と同じウイルスの型を持つ患者の報告がほかに5人あり、6人はいずれも7月下旬に関西国際空港(大阪府)を利用していたことが分かった。
この中には関空に勤務する20代の女性職員もおり、大阪府は1日、女性職員を含め同じ職場ではしかに感染していた職員が26人に上ったと発表した。この1週間で幕張メッセ2人、関空25人の計27人の感染が新たに判明したことになる。
はしかは例年、数十〜数百人の患者が出るが、多くは海外で感染して国内で発症。しかし、この1週間は不特定多数が出入りする場所を中心に広がっており、これらのルートとは別に東京都立川市で8月26日に行われたアニメイベントを訪れた客が感染していたことも判明。国内で持続的に広がれば「排除状態」でなくなる恐れもあり、厚労省は注意を呼びかけている。
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【用語解説】はしか
麻疹ウイルスによる感染症で、感染すると10〜12日の潜伏期間を経て熱やせき、鼻水など風邪のような症状が表れる。目やにや目の充血が多くみられ、発熱から2、3日後に顔や体に発疹が出ることが多い。重症化すると肺炎や脳炎などの合併症を起こし、死亡することもある。感染力が強く、空気感染のほか飛沫(ひまつ)や接触によっても感染。免疫を持たない人が感染するとほぼ100%発症する。特効薬はないが、日本では昭和53年から定期接種となっている予防接種で、発症や重症化を防ぐことができる。