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【社説】

築地市場の移転 情報公開を徹底せよ

 食の安全安心を最優先に考えれば、築地市場の移転延期の決定はしごくまっとうだ。小池百合子東京都知事は消費者目線に立ち、筋を通したといえよう。開場までを生産的な期間とせねばならない。

 いまの中央区築地から江東区豊洲の真新しい施設へ、国内最大の都の中央卸売市場を移す。多くの都民が抱く疑念を置き去りにして引っ越し事業は進められ、十一月に開場する運びとなっていた。

 七月の知事選で「立ち止まって考える」と訴えていた小池氏は、その約束通りに“待った”をかけた。消費者、納税者の素直な気持ちを代弁した形だ。

 まず安全性への懸念が拭えない。移転先用地からは、ベンゼンなどの有害物質が高濃度で検出されている。都は土壌汚染対策を講じてはきたが、地下水調査の最終結論が出る来年一月を待たずに開場することを決めてしまった。

 二〇二〇年東京五輪・パラリンピックに向けて、築地市場跡地を通る環状2号の整備を急ぐためだったと聞く。だが、逆立ちした手順は、都民や市場参加者の不安と不信をかき立てたに違いない。

 年間七十万トン、五千億円規模の生鮮食料品を扱う大市場だ。風評被害を恐れる業者からは「安全宣言」を求める声も出ている。首都圏の台所を預かる最高責任者として、小池氏は中途半端なゴーサインを出してはなるまい。

 引っ越し事業の費用が増大した根拠も洗い直すべきだ。一一年当初の計画に比べて、四年間で約五割増しの五千九百億円近くに膨張した。建設費は三倍に増えた。

 巨費を投じながら、交通アクセスや使い勝手の悪さが指摘されたり、耐震性能が疑われたりするのはどうしたことか。利権もささやかれ、いまだに不透明感が漂う。

 有識者チームを置き、事業の決定過程を含めて精査するという小池氏の発想は、合理的といえよう。無論、移転を準備していた業者の声にも耳を傾け、損失補償の要望には誠実に向き合うべきだ。

 小池氏は五輪開催都市のトップでもある。交通インフラの整備をにらみつつ、台所の混乱を最小化するためにも、移転プランを速やかに示す必要がある。

 築地市場の移転延期は、都政改革の第一歩となるか。自民党主導の都議会と都幹部らによる“根回し政治”のようなものがあるのなら、実態をよく見せてほしい。

 それには、情報公開を徹底することだ。それが公約の「都民ファースト」につながる。

 

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