新しい試験の具体像を早く示し、オープンに議論すべきだ。

 大学入試センター試験に代わって2020年度に始める共通テストについて、文部科学省が検討状況の中間発表をした。

 入試改革の議論は迷走を続けてきたが、今回示されたのは、これまでよりは実現可能性のある案といえる。

 一つは記述式問題の導入について、受験生の出願先の各大学が採点する案である。

 文科省が考えていたのは試験を12月に前倒しする案や、マークシート式とともに1月に実施する案だった。

 だが高校教育への影響が大きかったり、採点期間が短く短文で答える問題しか出せなかったりして出口が見えなかった。

 それに対して今回の案は各大学の2次試験の合格発表までに採点すればよく、時間の余裕が生まれ、出題の幅が広がる。

 ただ、これにも課題がある。どこまでの大学が採点の負担を受け入れて利用するか。国公立だけでなく私立や短大も含め、どう対応できるかだ。

 前提となるのがセンターがどんな問題を出し、大学の採点の負担をどう軽くできるかだ。文科省は相当数の問題例を公表し議論の土台を示してほしい。

 もう一つは英語の「聞く、話す、読む、書く」の4技能をめぐり、センターと民間の試験を合わせて評価する案だ。将来は民間への一本化を目指す。

 数十万人が一斉に受ける試験で、センターが「話す」「書く」力を測るには限界がある。

 かといって、どの民間試験でもよいわけではない。学習指導要領をふまえているか、受験料は適正かといった基準を設けるというが、中身によってテストの質が左右されよう。文科省は具体的な基準を示すべきだ。

 生徒が高得点を目指し何度も受験し、高校生活が試験漬けになる恐れがある。経済的な余裕のない家庭の子は何度も受けられず、豊かな家の子との間に不平等が生まれる可能性もある。

 いずれも対策が欠かせない。

 そうした検討の素材が示されて初めて、記述式や4技能試験をそもそも共通テストに盛り込むべきか、それとも個別試験で測るべきかも考えられる。

 文科省は関係団体などの意見を聴き、来年度初めに「実施方針」を公表する。それまで非公開で検討を続ける方針だ。率直に意見を交わすためという。

 経過がわからないまま結論を出されても納得はえられまい。

 高校や大学、保護者、そして生徒にこたえるためにも、議論を公開すべきである。