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概算要求101兆円 政治力を改革に生かせ

 2017年度予算の概算要求が8月末で締め切られ、要求総額は101兆円台と、100兆円の大台を3年連続で突破した。景気下支えを名目とした与党の歳出拡大圧力は強いが、国の借金は1000兆円を超し、財源は限られる。

     安倍晋三首相は参院選に勝利し、政権が強化された。年末の予算編成に向け、恵まれた政治基盤を生かし、歳出改革に本腰を入れるべきだ。

     公共事業を抱える省庁が要求を大幅に増やした。国土交通省は公共事業費を16年度当初予算比16%増の6兆円要求した。防災に重点を置くが、従来型の道路整備なども目立つ。

     農林水産省も農業の土地改良事業費を20%増の4584億円要求した。民主党政権時代に大幅に減額されたが、自民党が復活を図ってきた。

     背景には、インフラ整備に積極的な二階俊博氏が自民党幹事長に就任したことがある。安倍政権は概算要求基準で歳出総額の上限を設けず、肥大化を容認してきたが、公共事業拡大の動きに拍車がかかった。

     だが、公共事業は一時的な景気刺激に終わるケースが多い。持続的な成長に結びつかなければ、借金を積み上げるだけになりかねない。

     厚生労働省の要求額も31兆1217億円と過去最大規模に達した。社会保障費が大半を占め、厚労省は高齢化に伴う増加額を6400億円と見込んだ。政府の財政健全化計画は5000億円程度の伸びに抑えることにしており、圧縮が必要だ。

     一方、日本経済の足腰を強める施策も盛り込まれた。厚労省は、1億総活躍社会の実現に向け、保育所の整備や人材確保に1169億円を要求した。人口減少対策として、子育て支援の強化は急務だ。

     もっとも消費増税が先送りされ、社会保障費を賄う安定財源は確保できていない。裕福な高齢者に医療費負担増を求め、工面した財源を子育てに回すことなども検討すべきだ。

     安倍政権は「経済再生なくして財政健全化なし」を掲げ、痛みを伴う歳出抑制より、経済成長による税収増に依存してきた。だが、税収は伸び悩んでおり、歳出効率化の重要性は一段と増している。

     日銀のマイナス金利政策に伴う歴史的な低金利も財政規律を緩ませている。国債の利払い負担が減るからだ。しかし、低金利でも、巨額の国債の返済負担は重く、将来世代につけを回すことに変わりはない。

     政府は年末に向けて歳出を絞り込む方針だが、踏み込み不足に終わっては困る。強い政治力があれば、水膨れした歳出にメスを入れ、痛みを伴う社会保障改革にも取り組めるはずだ。首相はそれを実行するため、指導力を発揮する必要がある。

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