ミャンマー 民族の融和に期待する
ミャンマーの首都ネピドーで、国軍と少数民族武装勢力による政治対話が始まった。1948年に英国の植民地支配から独立して以来、70年近く続く内戦を終わらせる契機としてほしい。
ミャンマーには130以上の民族が暮らす。人口の7割弱を占めるビルマ族主導の国軍に対し、タイや中国との国境地帯に住む多くの少数民族が自治権を要求して戦ってきた。
今回の会議は「21世紀のパンロン会議」と呼ばれる。モデルは、独立運動の指導者だったアウンサン将軍が47年に東部パンロンで主要少数民族の代表と開いた会議だ。少数民族に広範な自治を認めることが合意されたが、直後に将軍が暗殺されたため実現しなかった。
将軍の娘であるアウンサンスーチー国家顧問は、民主化とともに、少数民族との融和を訴えてきた。開幕式の演説でも「パンロン精神」を強調し、「平和なくして国の発展はない」と呼びかけた。
内戦を口実に軍事政権を長く維持してきた国軍も近年、和平に前向きになっている。軍人出身のテインセイン前大統領は昨年、主要な武装勢力のうち8組織との停戦協定に署名した。会議には、まだ停戦に応じていない10組織も参加している。
和平の機運が高まった背景には、経済的な事情もあろう。
ミャンマー経済は2011年の民政移管を契機に年7〜8%の高成長を続けるが、少数民族の支配する国境地帯に眠る豊富な天然資源の開発には和平が不可欠だからだ。
ただ、和平実現は簡単ではない。
少数民族の側には、ビルマ族への不信感が根強く残る。信頼関係を築くには時間がかかるだろう。
国境を接し、複数の武装勢力に影響力を持つ中国の姿勢も重要だ。
スーチー氏は先月、新政権になって初の東南アジア諸国連合(ASEAN)域外への外遊として訪中。中国から「21世紀のパンロン会議」への支持を引き出した。
会議には、中国の影響を受けるとされる組織のうちカチン独立軍(KIA)やワ州連合軍(UWSA)が参加したが、不参加の組織もあった。中国には和平進展を後押ししてほしい。
タイや中国との国境地帯では、麻薬や鉱物の密輸も行われている。こうした利権を守るために和平を妨害しようとする勢力も存在するという。周辺国には密輸取り締まりでの協力も求められる。
日本は昨年から、停戦が実現した地域で学校を建設するなどの復興支援を始めた。民間企業の進出も盛んになり、経済的つながりが深まっている。和平の実現へ向けて積極的な支援を続けていきたい。