【ソウル=加藤宏一】韓国検察は1日、韓国のグループ会社から不当に報酬を得た疑いがあるとして、ロッテホールディングス(HD、日本)前副会長の辛東主(シン・ドンジュ、重光宏之)氏を事情聴取した。宏之氏の弟で次男の韓国ロッテ会長、辛東彬(シン・ドンビン、重光昭夫)氏も近く聴取を受ける見通しで創業家への捜査が本格化している。
裏金などの疑惑を巡る韓国ロッテへの捜査が6月に始まって以降、創業家で聴取を受けたのは宏之氏と昭夫氏の姉である辛英子(シン・ヨンジャ)氏に次いで2人目。宏之氏は同日、事情聴取を受けるためにソウル中央地検に出頭した。集まった記者団が日本語や韓国語で質問を投げかけたが、宏之氏は一切答えずに建物に入った。宏之氏にはすでに出国禁止措置がとられている。
聯合ニュースによると、宏之氏は2006年から昨年までに韓国のグループ会社であるロッテ建設やホテルロッテなど7~8社の理事(取締役)を務めたが、勤務実態が無いのに400億ウォン(約36億円)余りの報酬を受けた横領疑惑がある。宏之氏は検察の聴取に報酬を受け取った事実は認めたが「報酬が支払われている事実を後になって知った」と述べ、故意ではないと主張したという。
創業者の辛格浩(シン・ギョクホ、重光武雄)氏の長男である宏之氏は15年1月にロッテHDの取締役を解任されるまで日本ロッテの経営を担当。韓国ロッテを担当する弟の昭夫氏と日韓で経営を分担してきた。
英子氏は免税店事業の担当時に取引先に便宜を図る見返りに金品を受け取った横領などの罪で逮捕・起訴されている。
韓国ロッテは大規模な裏金をつくったり、不透明な取引を巡ってグループ企業に損失を発生させたりなど横領や背任などの疑いが持たれている。検察は会長の昭夫氏が疑惑に関与している可能性があるとみており、今後、昭夫氏についても近く検察への出頭を求める見通しだ。武雄氏が事実婚関係にある韓国人女性や娘らにロッテHDの持ち株を譲った際に贈与税を支払っていない脱税の疑いも浮上している。
ロッテを巡っては経営権を巡って宏之氏と昭夫氏の争いが続く。宏之氏は武雄氏から後継者に指名されたと主張するが、ソウル家裁はこのほど武雄氏に正常な事務処理能力が不足しているとして「限定後見人」を立てるべきだとの判断を下した。この判断は宏之氏にとっては不利な材料で、宏之氏側が家裁の決定を不服として控訴する可能性もある。