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夜伽の国の月光姫 作者:青野海鳥

【第一部】夜伽の国の月光姫

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第11話:ヘリファルテの晩餐会

 マリーとセレネのおまじないから数時間が経過し、辺りは完全に夜の(とばり)が落ちていた。セレネは、月明かりが反射する真っ白なベッドの上でバトラーを構って遊んでいたが、不意に部屋のドアをノックする音が響く。バトラーをベッドの下に戻し、セレネは枕元に置いてあった鈴を鳴らした。

 この部屋は広いため、ドアまでかなりの距離がある。いちいち声を出して反応しなくて良いように、気の利いたメイドが前持って配置しておいてくれたものだ。

 ちりんちりんと鈴が鳴ると、すぐに背筋を伸ばしたメイドがドアを開けて入ってきた。その動作は非常に洗練されていて、見ていて小気味良いほどだ。これでおばちゃんじゃなかったらもっと良かったのにとセレネは思う。

「セレネ様、体調のほうはいかがでしょうか?」
「だいじょうぶ、ありがとう」

 セレネはメイドに礼を言う。いくらセレネの中身があれでも、敵以外の相手に対しては、人として最低レベルの礼儀はわきまえているのだ。一応。

「お食事のほうは摂れそうですか?」
「たべる」

 セレネは元気良く頷いた。メイドを含めた他の者たちは、セレネが体調不良に無理を重ねて倒れたと思っているが、単に寝不足だっただけだ。睡眠欲が満たされた今、次に求めるのは当然食欲だ。セレネは欲望に忠実な人間なのだ。

「もしよろしければなのですが、国王様と王妃様が、是非セレネ様とお食事をご一緒したいとのことなのですが、いかがなさいますか?」
「王さま、王妃さま、いっしょ?」

 セレネは身構える。あの王子の父親と母親なのだ、とんでもなく傲慢な奴だったらどうしよう。飲みニケーションという言葉に拒絶反応を示すセレネは、どうしたものかと逡巡(しゅんじゅん)する。

「もちろん、体調がまだ完全でないというのであれば、またの機会という事でお伝えさせていただきますが」
「いきます」

 少し考えた後、セレネはそう答えた。国王と会う機会などなかなか無いだろうし、敵がどのくらいの力を持っているか情報収集できる絶好のチャンスだ。多少嫌でも、ここは乗っておいたほうが良いだろう。

「畏まりました。では、私めがご案内を……」
「私がやるわ!」

 突如割り込んできた大きな声に驚き、メイドとセレネが視線を向けた先には、真紅のドレスに身を包んだマリーが立っていた。

「マ、マリーベル様、一体どうなされたのですか?」
「どうもこうも、お父さまとお母さまが食事するんだもの、私も一緒に食べるのは当然でしょ?」
「え、で、でも、普段は一人で向かわれておりますが……」
「いいから! セレネは私が面倒見るの!」

 メイドを押しのけるように部屋に入り込むと、マリーはセレネのベッドの元まで近づく。

「セレネ、体は大丈夫? ご飯食べられる?」
「へいき」

 セレネが何でもなさそうに頷いたのを見て、マリーは安堵の表情を作る。

「良かった……心配してたの。料理長に、セレネにはお腹にいいものを作ってもらうよう頼んだんだけど、大丈夫なら一緒に食べましょ?」
「でも、わたし、マナー、よくわからない」
「ああ、そんなの大丈夫よ。私だって家族だけで食べる時はテキトーだもん」

 実にあっけらかんと言い放ち、マリーはセレネがベッドから降りるのを手伝った。
 先ほどまでの強引な引っ張り方ではなく、純粋に労わるような優しい手つきだ。
 寝起きの格好のままで良いのか、とセレネは尋ねたが、マリーはそのままで良いと言い切り、少し皺のついたままのドレス姿のセレネを先導し、部屋を出ていった。

「マリーベル様が他の子の面倒を見るなんてねぇ……」

 マリーは来賓の食事会などで同年代の子が居ても、つまらなそうな表情で仕方なく相手をするだけだ。まして、他の少女を自分が案内するなどもってのほかだ。姫の中の姫であると言い張る彼女は、そんな下働きは絶対にしないのだ。

 よほどあのセレネという子が気に入ったのだろう。金色と真紅に包まれた少女が、純白の少女を不慣れに誘導していく姿を、メイドは微笑みながら見送った。


 そうして案内された場所は、王族専用の食事室だった。
 衛兵や使用人が使う食堂は別の建物にあるのだが、王宮には王族専用の部屋がある。といっても、部屋自体はそれほど広くはなく、かといって窮屈でもないといった程度の物だ。広さだけで言えば、ちょっと大きめのコンビニ程度のスペースしかない。

 それなりに高価な調度品などは置いてあるのだが、どれも過剰な装飾は無く、一番目立つのは、部屋の真ん中に置かれた木製のテーブルの花瓶だというのだから、実にシンプルだ。そして、テーブルには既に前菜らしき物と、スープの入った鍋が用意されていた。スープの温かな湯気にのって、おいしそうな匂いがセレネの食欲を刺激する。

 料理の置かれたテーブルには、ミラノと、厳ついが聡明そうな顔をした壮年と、それとは対照的なふわふわした感じのセレブの奥様、といった感じの女性が既に着席していた。言われるまでも無く、この二人が国王と王妃なのだなと、さすがのセレネも一発で理解出来た。

「君がセレネか。私がこの国の王、シュバーンだ。今回はうちの馬鹿息子のせいで、とんだ波乱に巻き込んでしまったな。息子に代わって詫びよう」
「いえ、だいじょうぶ、ですます」

 大迷惑だよコノヤロウと思いつつも、セレネはたどたどしく、変な敬語で答えた。いくらセレネが人間的に問題があっても、さすがにそれなりの年の功はあるので、最低限の社交辞令というものは理解している。というか、シュバーンと名乗った国王がミラノと違いかなりの強面だったので、下手に怒らせるのが怖かったというのが本音だ。

「急に呼び出して申し訳ないわね。倒れたって聞いたけど、体のほうは大丈夫かしら?」
「だいじょうぶ、です、お気づかい、感謝、でごじゃいます」
「ミラノからある程度事情は聞いているわ。無理をして難しい言葉を使わなくていいのよ。私はアイビス。一応王妃ってことになってるけど、元はただの田舎者だから」

 セレネが大分時間を掛けながら敬語を引っ張り出したのを気遣ったのか、アイビスは垂れ目をさらに緩ませて、優しい声で笑いかける。

「王妃さま、びじん」
「あら、ありがとう。私なんかより、セレネちゃんは本当に綺麗な顔をしてるわ。ちょっと嫉妬しちゃうわね」
「それは、ない」

 セレネは首をふるふると振って否定する。自分の姿を鏡で見ても、過去のおっさんが中身に入っていると思うと、とても自分が可愛いとは思えなかった。なんというか、マスコットキャラに入った汗臭いおっさんのようなものを思い浮かべてしまい、己の美貌というものをあまり理解出来ない。

「父上、母上、そろそろ食事にしませんか? セレネをずっと立たせておくのは可哀想です」
「そうだな。セレネ、見ての通り、我々はこうして狭い場所で食事を摂る事にしていてな。君を来賓として扱うべきなのかもしれんが、今回は我々の家族という形を取らせてもらった」

 そうしてセレネはミラノに促され、用意された五つ目の席によじ登るようにして座った。シュバーンとアイビスが並んで座り、対面にミラノとマリーの兄妹が座る。セレネは真ん中、いわゆるお誕生席だ。

 もちろん、国賓や、凱旋してきた兵士達を丸ごと受け入れられる豪華な施設もあるのだが、シュバーンとアイビスは、可能な限り家族だけで過ごす団欒の時間を大事にした。身内を幸せに出来ない者に、見知らぬ人間を幸せにすることなど出来ない、それが彼らの信念だったからだ。

 そうして食事が開始される。給仕の類はセレネの部屋と同様、鈴を鳴らして呼ぶタイプの物で、室内では四人家族とセレネの計五人のみである。皆それほど喋る訳ではないが、決して嫌な沈黙はなく、各々が食事を楽しんでいる雰囲気が伝わってくる。

「ミラノ、アークイラはどうだった。私はあの国には行った事が無いのでな」
「座学で学んでいた時には、正直なところ全く気に留めていませんでした。ですが、豊かな自然に囲まれた気候の良い国です。こうして遊学のために様々な国を見ていると、自分の未熟さを痛感する毎日です」

 父王に対し、ミラノは思ったことを包み隠さず伝えただけだが、セレネは、ほお袋にエサを溜め込むハムスターのように口をぱんぱんにしながら、美味しい料理と一緒に苦虫を噛み潰す。

 何が遊学の旅だ。世間では「嫁探しの旅」だとバレているんだぞ。だが国王も王妃も特に言及する気はなく、ミラノの「遊学の旅」を信じきっているようだった。信じるも何も、実際にそうなのだから当然だが。

 ミラノの虚偽報告に疑問を持たないことをセレネは不審に思ったが、これだけの国を治めている国王だ、国外をほっつき歩いている放蕩息子の動向まで気が回らないのかもしれない。昼間見た感じでは、この国は想像と違い、随分と栄えているように見えた。その疑問が今解けた、きっと国王が優秀で、息子が駄目なのだ。

 芸能人や大企業の社長だって、多忙で家庭が疎かになる事もあるし、そうなると息子がろくでなしのボンボンになるという事例は、セレネもよく見聞きしたことだ。

 セレネも学生の頃、親に塾に行くと伝えてサボり、ゲームセンターに向かった事が何度かあったが、幸いにも成績が落ちたり致命的なミスは犯さなかったので最後までバレなかった。理屈はあれと同じだ。

 ミラノは外面の良さと狡猾さをフル稼働させ、事実を巧妙に隠す事に長けているのだろう。卑怯な奴め。セレネは勝手にそう結論付け、怒りと共に食べ物を飲み込んだ。

 そうして食事が終わると、しばらくは歓談の時間が持たれた。コミュ障かつ言語の苦手なセレネは、時折話しかけられては適当に「はい、はい」と頷くだけで、それ以外はぼーっと座っているだけだ。正直なところ、ご飯を食べたら後はとっとと自室に引っ込んでごろごろしていたい。

「あ、セレネ。口のところに食べ残しがついてるわよ」

 そう言うと、マリーが自分の席から降りて、セレネの口元をナプキンで拭いてやる。その様子を、他の家族三人がにこにこと見守っていた。

「な、何よ! 私がこういう事しちゃ駄目なの!? 何か文句ある!?」
「いや、駄目でもないし文句も無い。マリーが人の世話をする場面が珍しくてな」

 ミラノが笑いながらそう言うと、父と母も同意するように軽く頷く。
 マリーは少し不機嫌そうに頬を膨らませるが、それほど気は悪くしていないようだ。

「セレネ、あなた今いくつ?」
「8つ」
「私は10歳よ。ほら、私のほうがお姉さんでしょ。お姉さんは妹の面倒を見るものなの」

 どうだ、とばかりにマリーは胸を張る。基本的にマリーは構われるだけで、構う対象が居なかったのが不満だったらしい。そんな中、他の同世代の子と違い、大人しく従順、そして愛くるしいセレネがやってきたのだ。マリーにとってセレネは、実に可愛がり甲斐のある少女だった。けれど、そのセレネが急にしょんぼりと俯いてしまい、マリーは怪訝な表情をした。

「どうしたのセレネ? 痛かった?」
「ねえさま……」

 マリーの「お姉さん」という言葉を聞いて、セレネは急に寂しくなった。姉のアルエと離れてまだそれほど時間は経っていないが、もう随分会っていないように感じる。あの柔らかく、温かな体温、香水のような甘い香りをもう暫く感じていない。何より、おっぱいに顔を埋めていない。

 前世では考えられない事だが、今のセレネは定期的に乳房に触れないと精神状態が悪化する難病、乳房欠乏症に冒されていた。もちろんそんな病気は無い。セレネが勝手にそう名付けて思い込んでいるだけで、いたって健康体であり、ぜいたく病である。

「セレネちゃん、何か欲しい物はあるかしら?」

 おろおろするマリーに助け舟を出すように、絶妙なタイミングでアイビスが話しかける。
 床に目線を向けていたセレネは、その声に引き上げられるかのように顔を上げる。

「ほしい、もの?」
「そう、何でもいいわよ。さすがに『お城が欲しい』とかだとちょっと困っちゃうけど、大陸で手に入るものは大体調達できるし、こうして会えたのもきっと神様の思し召しよ。こうみえても私、王妃だからそれなりに融通は利くのよ」

 アイビスは上品にセレネに笑いかけた。横に居たシュバーンも、王権を振り回すことを良しとしない厳格な男だが、この時は何も言わず、後押しするように首を縦に振った。姉を思い、一人異国の地に拾われてきた幼い少女が、泣き出しそうなほどに萎れていたのだから無理もない。

「うーん……」

 セレネは眉をへの字にし、困ったような表情でアイビスを見つめている。
 アイビスはというと、セレネの表情に、嬉しさより困惑の表情が浮かび出ている事を不思議に思っていた。

「(欲しいものが多すぎて悩んでいるって感じじゃないわね)」

 このくらいの女の子なら、洋服、お菓子、おもちゃ……欲しいものは幾らでもあるはずだ。自分もそうだったし、マリーもそうだった。けれど、セレネはそういう風な浮かれぶりが無い。もしかたら、望んでいる物は、形のある「物」ではないのかもしれない。

 ヘリファルテ一家はしばらくの間、無言でセレネを見守っていたが、セレネは椅子から降り、遠慮がちにちまちまとアイビスの元へと歩み寄る。そして、上目遣いで彼女を見て、小声でこう言った。

「ぎゅっ、ってやって」
「え?」

 その言葉にアイビスは首を傾げる。するとセレネは、両手を広げ、目の前の空気を抱え込むような動作をした。

「もしかして、抱きしめて欲しいってことかしら?」
「はい」

 少し気恥ずかしそうにしながらも、セレネはこくりと頷いた。
 アイビスは暫く何かを考えるようにしていたが、やがて笑みを作り、両手を広げる。

「いいわよ、さあ、いらっしゃい」
「いいの!?」

 セレネは駄目だと思っていたのか、一瞬遅れた後、ぱっと可憐な笑みを浮かべた。
 そして、そのままアイビスの胸元に飛び込む。華奢なセレネの体をアイビスは抱きとめ、強く抱擁する。

「おほーっ!」

 セレネは大満足だ。アルエはぷりぷりとして弾力がある感じだが、アイビスはしっとりと包み込むような柔らかな感触だ。中々に濃厚で味わい深い熟成肉である。セレネはおっぱいソムリエとして、脳内の得点ボードに「85点」の評価を書き込んだ。

「うん、ていすてぃ」
「え?」
「やすらぐ」
「そう……良かったわね」

 セレネは、アイビスの胸の感触をしばしの間堪能すると、さすがにこれ以上はまずいと自粛し、自分から離れた。物事には引き際が大事なのだという事は、おっさん時代に学んでいた。

「王妃さま、ありがとう」

 少し頬を紅潮させ、はにかみながら礼を言うセレネの頭を、アイビスはそっと撫でた。
 その様子を、シュバーンも、ミラノも、マリーまでもが穏やかな表情で眺めていた。

「では、そろそろ食事はお開きにしよう。マリー、セレネを部屋まで案内して貰ってよいか?」
「うん! 私はお姉さんだからね! セレネがお姉さんに会えない間……ううん、会えた後も、私がセレネのお姉さんになってあげるから、どんどん私に甘えるといいわよ!」

 そう言ってマリーはセレネの手を取る。その掌には力が篭っていて、マリーなりの使命感に燃えているようだった。

「王さま、王妃さま、ありがと、おやすみなさい」

 部屋を出る直前、セレネはぺこりと一礼をし、マリーと共に出ていった。地味に王子には挨拶しなかったのだが、幸いミラノが気付く事は無かった。

 扉が閉まり、マリーとセレネが退室すると、ミラノはシュバーンに顔を向け、先ほどとはまるで違う口調で喋り出す。

「ご覧の通りです、父上」
「なるほど、お前が無茶をしたのも理解出来る。あれは、あまりに悲惨すぎる」

 シュバーンは父親から国王の顔になり、重苦しく呟いた。それに同調するように、アイビスも悲しげな表情をする。

「びっくりしたわ。お洋服とか、お人形とか、そう言った物だと思ったのだけれど、まさか、抱きしめてくれなんていうと思わなかったわ」
「セレネは、世間一般の『幸せ』というものが、よく理解出来ていないのだと思います」
「そっか、そうよね……私もまだまだ未熟だわ」

 自分も貧しい身分の出自だから、ある程度、虐げられた者の気持ちがわかると思っていたアイビスは、不甲斐なさそうに呟いた。

 あの年齢の女の子なら、洋服や人形、もしくは美味しいお菓子ならきっと喜ぶだろう。そう考えていたのだが、そもそも、セレネにはそういった物を手に入れることが、女の子にとって喜ばしいという概念自体が無いのだろう。それはアイビスの想像の範疇を超えた境遇だった。

 本当のところは、セレネはおっさんなので、お洋服やお人形さんなどにまるで興味が無い。服は着心地のいいジャージだったら欲しかったし、お人形さんもフィギュアやプラモデルだったら頼んでいただろうが、生憎それらはこの世界に無い。食事に関しては腹が満たされればいい。ならば乳房一択である。

「しかし、それでも本や服と言った物の存在は知っていたのだろう? その上で、一番に求めたのが人の温もりとは……何と哀れな子だ」

 シュバーンはやりきれない、と言った口調でそう呟いた。
 あの儚げな姫が一番求めて得られなかった物、それは、どんな貧民でも手に入る、母の温もりだと言うのは、あまりにも寂し過ぎる。

「父上」
「何だ?」
「先ほどお話しした隣国の件ですが、アルエ姫の手続きが落ち着いたら出発しようと思います。その時は、セレネを同行させようと思うのです」
「理由は?」
「あの子に、なるべく多くの世界を見せてやりたいのです。今までの不幸を打ち消すほどの、素晴らしい世界を。隣国までなら旅の負担も少なく、街道も整備されているので危険は無いでしょう」
「お前のためというより、セレネのための遊学になりそうだな。まあ、それも良いだろう。護るべき物があるからこそ、人は強くなるのだからな」

 そう言ってシュバーンは笑い、それから鷹揚(おうよう)に頷いた。
 目の辺りにした幼姫を見て、息子の提案を突っぱねる気は全く無かった。

「けれど、セレネちゃんはそれで大丈夫かしら?」

 頬に手を当てながら不安そうにしているのはアイビスだ。

「だって、隣国には『あの子』がいるでしょう? ミラノのお嫁さん探しなんて誤解までされてるのに、その上でセレネちゃんを連れて行ったら、ちょっと……どうなのかしら」

 アイビスの言葉に、シュバーンもミラノも妙に強張った顔つきになる。
 隣国の『あの子』は、ミラノにとって、ある意味で、凶悪な犯罪者や竜より性質の悪い存在なのだ。

「確かにな……だがミラノの言うとおり、セレネ姫にとっては貴重な体験ではある。アークイラの監獄とヘリファルテの王宮のみの世界では、いささか偏りすぎるからな。ミラノ、お前が彼女をしっかりと護ってやるのだぞ」
「分かっております」

 こうして神妙な雰囲気の中、ささやかな夕食は終わりを告げた。
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