韓国では昔から、警察官とは「悪い人」の代名詞のような存在だった。それは、現在も基本的に変わらない。警察、検察、情報当局の人事を総括する大統領府の民情首席秘書官は、巨額の金銭スキャンダルに塗(まみ)れながら、朴槿恵(パク・クネ)大統領の庇護を受けて居座っている。その民情首席の裁可を経た警察庁の新長官(58)も、また“すごい経歴”の持ち主だ。
もう23年も前のことだが、彼は飲酒運転をしていて事故を起こした。衝突された車は全損だったというから、大きな事故だ。休日に、転勤する警察官と昼食をともにした後、帰宅途中だったそうで、血中アルコール濃度は0・09%。当時の韓国の法令でも免許停止処分だ。彼は罰金100万ウォン(約9万円)を支払い一件落着したことになっていた。
ところが、新長官として名前が挙がるや、“その時のこと”が明るみに出た。内部からのチクリとしか考えられない。彼は事故を起こした際、警察官であることを隠し通し、警察内部の処分を免れていたのだ。
別の疑惑も出てきた。
彼は2005年、妻の名義で、江原道(カンウォンド)のオウォン貯水池の畔(ほとり)の土地531平方メートルを購入し、2階建ての別荘(182平方メートル)を新築した。当時の職位は定かでないが、いずれにせよ韓国の公務員給与からしたら、自宅のローン払いに追われている年齢だ。
しかし、資金の出所を問う声は出なかった。平の巡査だって金持ちなのだ。キャリア警察官なら、もっと「いろいろある」から、そのぐらいの資金があるのは当然と、野党の議員も思ったのだろう。「いろいろある」の中身をほじくったら、野党の議員もほとんどアウトなのだから。