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天皇陛下が生前退位に込めた真意
政治家も有識者も不明だ
「象徴の務めが途切れることなく」の持つ重い意味が皇族や国民に届かない?!


■宮内庁と官邸が綿密に調整し
 宮内庁はさる8月8日、象徴としての務めについての考えを示された天皇陛下のビデオメッセージを公表した。「生前退位」を示唆したビデオだったが、それは7月13日のNHKスクープから始まった。 「ニュース7」の放送直前、「天皇陛下『生前退位』の意向示される」とのテロップを流すのである。  新聞やテレビはビデオメッセージについて、陛下のお心を国民に伝えることが果たしてできたのだろうか、甚だ心もとない。  ビデオメッセージ公表後、記者会見した風岡典之長官は、秋篠宮さまが'11年の誕生日記者会見で「定年制というのは、やはり必要になってくると思います」と述べられたことを取り上げ、その頃から、陛下もご発言されるようになっていたと、こう明かした。 「象徴としての務めを果たすことが困難になった場合に、どのように考えればよいのか、とおっしゃった」  陛下ご自身が69歳だった'03年に前立腺がん、78歳の'12年には心臓冠動脈のバイパス手術を受けられた。  昨年8月15日の全国戦没者追悼式では黙祷とお言葉読み上げの順番を間違えられた。式典を生で見ていた皇室ジャーナリストが語る。 「そのとき、お隣におられた皇后陛下は微動だにされることはなかった。大変な精神力だと感心した」  皇后陛下にとっては、なりゆきにまかせるしかないというお覚悟がすでにできていたのだろうか。  陛下が皇太子さま、秋篠宮さまらと月1回のペースで懇談されるようになったのもその頃からだ。  だが、いちばん動こうとしなかったのは、政治のほうだった。しかし、さすがに今回のビデオメッセージではメッセージの内容について宮内庁と官邸との間で数回にわたる綿密な打ち合わせがあった。  政治ジャーナリストが語る。 「宮内庁長官が陛下のお気持ちを代弁したり、文書を配布するという案もあったが、最終的には陛下が直接、国民に話しかけることになった。官邸と文案を3〜4回調整していく過程で、消えていった部分がいくつかあった。その一つに悠仁さまについての箇所があったようだ」  陛下は、ビデオメッセージで国民に何を語りかけたかったのだろうか。  それが意外に難しい。  読売新聞では、「象徴の務め困難に」と見出しを取り、「天皇陛下生前退位を示唆」と語った。ところが陛下が語られる「象徴」とは何かについては、関係者の間での理解が一つに収斂されているわけではない。メッセージでは約10分間の中に象徴という言葉が8回も繰り返し登場してくる。



■悠仁さまへ伝えたかったこと
 新聞記事のなかでは日本経済新聞の記事が比較的丁寧に説明していた。 「8日に表明された陛下のお言葉は、まさに『象徴とは国と国民のために活動するもの』という信念だった。これは憲法や歴史家、政治家などが定義したものでもない。天皇陛下自身が『象徴とは何か』を長年考え続けて到達した『象徴のかたち』だ」  宮内庁職員を23年間務めた山下晋司氏が語る。 「憲法の第一条に天皇は日本国及び日本国民統合の象徴とあり、第二条に皇位は世襲によるとある。象徴としての天皇は生身の人間として国民は目で見ることができる。しかし、歴史や権威などさまざまなものを背景とした結果である世襲というものは形として見えるものではない。  今上天皇はその見えるもの、見えないもの両方を天皇としての活動を通して国民に示してこられたと思う。無私の心で国民に尽くされる。国民はそのお姿を拝見して、信頼し敬愛するようになる。皇位を世襲する人に対しても、そのような心持ちを持つように育てていかなければならないと考えておられると思う」  悠仁さまの教育問題については、どうあるべきか、いまどうなっているのかさえ、はっきりしていない。  昭和天皇は学習院初等科を卒業されるとすぐ、旧高松宮邸(東京・高輪)に設けられた東宮御学問所に移られて、選ばれた5人のご学友と7年間、生活された。  今上天皇のときは御学問所のような特別な施設はなかったが、専門の�教育係�から個人講義を受けられた。英語教育のバイニング夫人、ジョージ5世伝などの講義をされた小泉信三氏がなかでも有名だ。だが、悠仁さまの周辺から漏れてくるのは教育とは縁遠い話ばかりだ。  悠仁さまは、お茶の水女子大附属幼稚園から同小学校に進まれた。しかし、お茶の水女子大附属高等学校は女子校なので、悠仁さまはやはり、高校は学習院に入られることになるのだろうか。  また、皇太子さま、秋篠宮さまに次ぐ、皇位継承順位第3位であるにもかかわらず、天皇直系の「内廷皇族」(天皇家と皇太子家)ではないために予算が少ないという不満もある。  これでは陛下が、国民から信頼されるための基本であるとして務められてきた、目に見えない世襲のほうをご心配されるのも無理はない。 「メッセージの最後のあたりに『そして象徴天皇の務めが常に途切れることなく、安定的に続いていくことをひとえに念じ……』とある。ここは天皇陛下の秋篠宮さま、紀子さまへの語りかけだ。国民の象徴としての天皇は日本国民が先にあって私は後になる。それが教育できて初めて世襲が成り立つ」(皇室関係者)



■憲法学者も洞察力はなかった
 もう一つの重要なメッセージが天皇退位はどういう方法で実現していくかだ。新聞各社の多くは、退位は憲法改正しなくても皇室典範の改正か特別立法で十分可能だという。 「天皇陛下は特別立法や皇室典範の改正ではなく、憲法を改正して生前退位するべきだと考えておられるようだ。新聞各社もそれは薄々感じているが、朝日新聞や毎日新聞は社論が護憲であるために特別立法でといっているようだ。だから改憲派の読売新聞、産経新聞、日経新聞などが安倍首相を説得して、天皇が生前退位という一点だけで改正すればいい。そのとき、朝日などは孤立していくだろう」(前出、皇室関係者)  新聞、雑誌、テレビなどマスコミの皇室報道のおかしさは、今回の生前退位報道でも見られた。 「憲法学者は何人もいるが、天皇陛下と親しくお話できるような人はいない。そういう彼らが象徴とはといってみても、なんの意味もない。生身の人間としての天皇が象徴を実践されてきたことへの洞察力がないからだ」(前出、政治ジャーナリスト)  安倍首相も8月8日、「天皇陛下の御心労に思いを致し、どのようなことができるのか、しっかりと考えていかなければいけないと思います」とのコメントを読み上げるのが、せいぜいだった。

(2016年9月号掲載)
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