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被害急増 高額の「身代金」支払い例も

トレンドマイクロの大三川彰彦副社長=2016年8月31日、岡礼子撮影

 パソコンやスマートフォンを勝手にロックしたり、データを暗号化したりして“身代金”を要求する不正プログラム「ランサムウエア」の被害が拡大している。情報セキュリティーのトレンドマイクロ(東京都渋谷区)によると、今年1月から6月までのパソコンなどでの検出件数は前年の同期間に比べ約9倍の1万6600台、被害報告件数も同7倍の1740件で、中にはパソコンを元通り操作できるよう1000万円以上の身代金を支払った企業もあった。同社では「身代金を支払わないでほしい。支払っても復旧される保証はなく、さらに標的にされる懸念がある」と呼びかけている。

     同社は今年6月、国内企業などでITに関する意思決定に関与する担当者534人に対し、初めて企業のランサムウエア被害の実態調査を実施。その結果、4人に1人がランサムウェアによる攻撃を受けた経験があり、社員300人以上の企業に限定すると4割近くが攻撃を受けていたことが分かった。経験者のうち7割は、データを引き出したり加工したりできなくなる暗号化の被害を受けていた。主に社員情報、業務に関する情報、顧客、取引先に関するデータが暗号化されていた。

     さらに、暗号化の被害にあった人のうち、6割以上が「業務が滞る」として、“身代金”を支払っていたことも分かった。払った金額は300万円以上が過半数、中には1000万円以上払ったケースもあった。しかし、支払い後にデータが完全には復旧しなかった人が4割いた。ランサムウエアで業務に支障が出るなどの被害総額は約半数が500万円以上、約1割が1億円以上だった。

     同社は企業に向け、対策のための解説書、暗号化されたファイルをもとに戻すツールを無料で提供している。ランサムウエアの種類などによって戻せない場合もある。一方、個人向けには、1日発売のセキュリティー対策ソフトの最新版に、新しい保護機能をつけた。従来、個人向け対策ソフトは、不正プログラムの侵入を検知して感染を防ぐことを主眼にしていたが、(1)データを暗号化されそうな不審な動きを検知したら、データをバックアップ(2)指定したフォルダへのアクセス権を制限−−するなど、データを守ることを重視した2機能を付加した。セキュリティー対策や機器の不具合などについて相談できるサポートサービスも拡充し、対応時間を24時間に延ばした。

     大三川彰彦副社長は「ランサムウエアなどで、スマホ内のデータを改ざんされ、起動できなくなるケースは日々起きている。(すべてのものがインターネットにつながる)IoTが進めば、セキュリティー対策が必要な機器はもっと増える」と指摘し、「SNS乗っ取りなどの被害は身近な話題になり、対策ソフトの販売を始めた25年前と比べると、ネット利用者のセキュリティー意識は高まったと感じるが、一方で、日常的に使っているからといってセキュリティーのリテラシー(使いこなす能力)が高いとも限らない。特にモバイルへの脅威について、我々が提供しているサポートサービスで、対策の必要性が伝わるのではないか」と話している。【岡礼子/デジタル報道センター】

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