本日のまとめ

アイスクライマー(Disk版)

VSシリーズの出来をそのままに

発売日:1988年11月18日   発売元:任天堂   ジャンル:ACT
Disk:片面   値段:500円(書き換え専用)
オススメ度:3.5(48ステージと強風という名の新トラップの数々)

 1985年に発売されたアクションゲーム『アイスクライマー』を、3年後にディスクシステムに移植したもの。
ただしシステムが大幅に変更されている、というより操作性が大幅に改良された一方で仕掛けも増えてきている。
これにより、難易度の具合はROMカセット版と変わらず維持されているが、操作性が(少しだけ)よくなったことでゲームの難易度が実質下がっていることはあるものの、それでも決して難易度は下がらず維持されているのは元々のゲームの出来具合がよかったことだろう。
 ROMカセット版共通して、このゲームの目的は一度も画面下に落ちることなく山の頂上を目指すことで、さらにボーナス点も獲得すること。
その間の道中で待ち構えるトッピー(アザラシ)やニットピッカー(鳥)などの敵を蹴散らしつつ、階層の間の壁を木槌で崩しながら頂上上空にいるコンドルにつかまってようやくクリアできるわけで(ボーナスステージ突入からステージはクリア)、毎ステージでのボーナスステージはほかのゲームのような数ステージおきではなかったから、高得点を目指すプレイヤーにとって喜ばれたことだろう。
もっとも、ボーナスステージも制限時間つきや仕掛けなど何度の高い要素があるので、毎回ボーナスステージで高得点を獲得できるほど甘くはないし、得点が入るのは(ボーナスステージ含む)ステージクリア後かゲームオーバー後だったりする。
それだけに、ステージ攻略中エクスデンドで自機が増えない以上プレイヤーにもどかしさはあったのだろうが、永久パターン阻止のホワイトベアの存在や少ない自機ストック限界などもあったことを考えれば、ステージ終了後に得点が入ること自体例がなかったというべきか。
 だが、それ以上にこのゲームの人気が出た要因は2人同時プレイで、プレイしだいで協力や対戦もできる代物だったのだ。
この手法は『マリオブラザーズ』に似ていて、アイスクライマーの場合協力プレイでは片方が敵を蹴散らしている間に、もう片方が頂上までの突破口を開くという役割分担と、ボーナスステージでも協力してボーナスを共有することを指す。
対戦では、マリオブラザーズのような邪魔するものと違って、もたついている相手を尻目にどんどん頂上まで登っていき相手を画面外に落とす、すなわち相手をミスさせてボーナスを独り占めにするという、友情崩壊という意味ではマリオブラザーズと似ていて、ボーナスステージでもそのボーナスを独り占めするためにもう一人のプレイヤーと戦い続ける。
アクションゲームの対戦の定義、それは相手を妨害して倒すことが定番ならば、アイスクライマーのそれは相手を妨害せずテクニックでの妨害という例のないもので、対戦で相手を陥れるのもその逆になるのも己の腕次第が斬新であったといえよう。

 人気が25年経過した現在でも、ROMカセット版が数千円という中古に似合わない値段で発売されていて、ファミコンミニ版発売後も数百円値を下げた程度に過ぎず、このゲーム発売時に登場したゲームのほとんどが数百円程度であることを考えれば、いかにこのゲームが一部の熱狂的なファンによって人気が維持されてきたことがよくわかる。
ROMカセット版登場の4年近く後、ディスクシステムに移植されたこの作品は発売前後に続々と登場した往年の任天堂作品同様、書き換え専用として再び登場している。
その前には、アーケードに移植されて『VS.シリーズ』のひとつとなっているが、アーケード版はROMカセット版とシステムなどがかなり変わっている。
 ディスクシステム版は、そのアーケード版を書き換え専用として移植したのだが、ファミコンのシステムとほぼ同じであるVS.システムの作品とはいえ、すべて移植するわけではなかった。
このころのファミコンの性能と比べれば、本体こそ先に書いたように同程度だがソフトは昔のシステムより性能が上になっていて、ディスクカードについてはさらにその上を行っているものの、数年後にはROMカセットに上回れてしまっている。
それでも、まだ当時のROMカセットの性能はディスクカードの容量に勝るものができつつある段階で、セーブなどのシステムや性能もディスクゲームが上を行っていた。
加えて、値段が安くディスクカード単体よりはるかに安く書き換えができるディスクゲームだから、手軽にいろんなゲームをプレイできるという点でもROMカセットより勝っていた。
  なお、任天堂がROM版からディスク版に移植されたゲームにおいて、ディスクシステム誕生初期は書き換え専用ではなくディスクカード単品で発売されていて、書き換えが定番になってきた1988年以降は書き換え専用のものも増えてきた。
同時に、書き換え専用でなければ遊べないゲームも続々登場し、ディスクシステムと書き換えの利用価値をますます高めることになった。
VS.シリーズ作品の一部が、ディスクシステムに移植されるようになったのもこのころで、ファミコンへの移植またはアーケードへの逆移植を前提としていたシリーズだから、まさかVS.シリーズからの移植であることはアーケード版をプレイした人でなければわからなかったと思われる。
それだけに、VS.シリーズの要素がディスク版オリジナルの要素だと思った人はかなりいたはずだろう(当時のゲーム雑誌は、ディスクへの移植作品を取り上げることはほとんどなかった)。

NO
BOUNUS!

 まず最初に、ステージ数が30から48へと大幅に増えた一方で、24ステージずつ2分割され(1〜24、25〜48)分割された24ステージしか行けないようになった。
これにより、最初から最後のステージを選ぶことができなくなった一方で、6ステージクリアするごとにスーパーボーナスステージが行われて、そのクリアの可否問わずもう片方の24ステージのうちの6ステージ分を楽しめるようになり、その繰り返しでゲームは進んでいく。
そのスーパーボーナスステージは、通常のボーナスステージ同様頂上に登っていくもので、たとえ頂上に登ることができなくても今いる高さに応じてボーナスがもらうことができる。
ボーナスステージの野菜の種類も20増えているが、それ以降になると野菜のグラフィックがバグりはじめ、野菜かどうか奇妙なものになるがそれはまさかゲームオーバーにならず20ステージを越えてプレイできると予想していなかったのだろう。
 ステージ進行手法に話を戻すが、この手法はROM版のように自由にできるものとは違うので、ゲームオーバーになったらすぐ終わるアーケード版ではいきなりステージ48をプレイできるのは、アクションに自信がある人でもさすがに無理があったと考えられる。
その代わり、先にも書いたように最初に24ステージ中6ステージをクリアしてプレイヤーにこのゲームを慣らせてから、ステージ48を体験させる手法はアーケード版に無理なくあわせている。
ちなみに、25ステージ以降のステージの色は紫やオレンジなどでコンドルも色が青に変わっていて、色的にもこのゲームにふさわしくなさそうだが難しいステージと考えれば大丈夫か。
 その難しいと思わせる要素がいくつかあり、48ステージのうち数ステージ分強風が吹き、歩く分だけそれほどたいしたことはないがジャンプしたりするとその抵抗を食らってしまい、向かい風それも着地した場所が滑る床の場合、その後の惨劇は目も当てられないほどいやらしい。
リフトの雲についても、ステージによっては高速で移動したり25ステージ以降は斜め上下に移動したりと、リフトに乗ること自体も一苦労。
同じ階層に一定時間いれば、ホワイトベアの妨害があるのはROM版と変わらず、高速上下に動くリフトとホワイトベアの妨害のコンボは、まさに地獄といっていい。
一方操作性は、ジャンプでの補正はROM版よりしっかりしているもののたまにROM版同様のものになることもあり、ステージによっては難易度が上昇することもあるがジャンプ補正は変わっていることは事実で、ボーナスステージで近道ができるのはうれしいことだ。

 こういった仕掛けのほかに、輪をかけてニットピッカーなどの敵も襲い掛かってくるが、ゆっくり歩いて足場を修復させる敵はトッピーからイエティ風味(の子供)に変更されている(にもかかわらず、説明書ではトッピーのままなのはROM版の説明書の内容をそのままコピーした感じがある)。
ニットピッカーについては、今までの行動に加えて画面左右の外からいきなり急スピードで突っ込んできたりするので、まだこのゲームに慣れていないプレイヤーそれも最初からいきなり突っ込んでくるニットピッカーに恐怖した人はいたはずだ。
アーケード版に登場した敵は出ないとはいえ、新たな仕掛けや敵の行動のバリエーションの多さにこれ以上勘弁してほしいという声があるものの、すべてが理不尽なものではなく何度もやりこめばクリアできるほどの難しさなので、そのあたりが練りこまれた難易度の範囲内といえよう。
 このほかに変わったり追加された要素は、ステージ中に特定の壁を壊すと数字のついたコインが登場するようになり、それをとることでボーナスステージに支給される得点のうち、コンドルにつかまったときの得点以外がコインに書いてある数字の分だけ倍になるという、高得点を目指すプレイヤーにとってまさに願ったりかなったりとはいえ、施設に苣体を記録を置く関係上ファミコン版より長く残すアーケードだからこそ実現できたのだろう。
また、BGMの多くが変更というより若干改変されたことにより、すでにROM版をプレイした人なら改変したのかという雰囲気であり、ボーナスステージ後の結果とステージセレクトについても新たにBGMが追加されて、ますますゲームを楽しくさせている。
ボーナスステージについてはサウンドも変わっているが、よもやサウンドまでも帰られているとは予想外といえるが、なぜわざわざサウンドまで変えたのかは不明。
 いずれにせよ、ROM版より若干多い程度の容量それもディスクカードの片面なのに、アーケード版の要素をほとんど詰め込んでいるのは見事で、500円でアーケード版に限りなく近いものが手軽にプレイできるのはうれしい(それは同じVS.シリーズのディスク版『クルクルランド』も同様)。
ただ、今となっては2003年にディスクシステムの書き換えが終了してしまい、書き換え専用のゲームもそれにより軒並み高騰化してしまっている。
このゲームも、一万円以上だったり数千円以上だったりと高い値段を維持しているが、ROM版がいろんな機種やゲームの一部におまけとして登場していることを考えれば、往年のファンとしてはディスク版(アーケード版)もほかの機種に移植してもらいたい思うはずで、ディスク版をこのまま移植せず書き換え版のままうもらせておくのはもったいない気がしてしまう。

 ROM版のほうで書いたが、このゲームに触れたのは24年ほど前でそのころはROM版からだった。
友達の家やいとこの家でいろんなゲームを楽しんでいる私であったが、ゲーム雑誌をほとんど買っていない以上どういうゲームが発売されているのかわからなかったし、ディスク版に移植されていることなど知るわけがなかった。
もちろん、ゲーム雑誌を買うことはあったが当時の雑誌に書き換え専用登場の情報こそあれど、ROM版とディスク版の内容が違うことを報道することはなく、ただ発売予定表に書き換え発売の日にちが書いてあるだけだった。
当然、VS.システム作品がゲーセンに登場していることも知らなかったし、それらの一部がディスクシステムに逆移植されていることも知らなかった、というよりROM版のディスク移植であるものも多くすでにわかっていたから、わざわざ買う必要もなかった(私の家にはディスクシステムがなかったから、ディスクゲームを買うこともなかったしプレイする機会も限られていた)。
 それだけに、アイスクライマーのディスク版がROM版同様ではなくアーケードのVS.シリーズを移植したという事実に驚いた。
ディスク版自体、数年前大手レトロゲームサイトで知ってはいたがどうせROM版の移植だからということで、書き換え版専用であることも手伝ってプレイする必要はなかったが、ROM版をレビュー中にディスク版の内容を知り、急遽取り寄せることにした。
結構高かったが、ROM版と内容が違うゲームとなればレビューしないわけにはいかなかったものの、少し程度の変更だけだったら『その他のゲーム紹介』という形で紹介する程度にとどめようと思った。
しかし、内容が多く変更されていたりステージ数が追加されているという新しい部分が多く見つかったことで、このゲームを新たにディスク版という形でレビューしてみたいという気持ちになった。
 最初プレイしたときは、ジャンプの性能が格段に上がり『帰ってきたマリオブラザーズ』のようにROM版よりジャンプの性能がよくなりうれしくなったが、操作によって再びジャンプの性能がROM版同様になってしまったり、ROM版にない仕掛けに苦戦させられた。
仕掛けの内容は、ROM版のレビューの最中にネットで調べてわかってはいたが、攻略もできなければ対処もしていない以上ROM版も苦しんだがディスク版もかなり苦しめられ、何より上下に動くリフトと不定期的に飛び回るニットピッカーの組み合わせはまさに悪夢だった。
当然、一定時間経過すればホワイトベアが画面を押し下げてくるので、いくら自機のストックが多くなったとはいえ連続でやられたら自機がいくつあっても足らないし、リフトが高速で上下するステージはどうしたものかと考えるしかなかった。
何とかクリアしても、ボーナスステージ次第でクリアしたステージの番号の上に現れるキャラがプレイヤーかイエティか分かれるので、ボーナスステージクリアに失敗すると出るイエティに思わず悔しさを募らせた。
 ただ、理不尽な難しさではなくやりこめば何とかクリアできる難しさなので、長い時間をかけながらだったが(ディスクセーブはなし)何とか48ステージすべてクリアすることができ、ようやくほっとすることができた。
ちなみに、ディスク版レビューを書く数ヶ月前にちょっとプレイしていたら、野菜のグラフィックがバグったのでそれは新事実だということで何度かプレイした結果間違いはないと判断して、ブログにそのことを書いている。
バグ発見あり48ステージクリアと、今までの苦労が報われた気持ちでいっぱいだったのもつかの間、エンディングかと思っていたらなんとループしたので、こればかりは思わず苦笑いするしかなかった。
古いゲームだから、このままループするとは思っていたが48ステージの長丁場だからエンディングになるとも思っていただけに、後者の思いが強かったので結構ショックは受けたものの、48ステージすべてクリアできただけよかったなと思う。