「脱輪王」で何度も「落第！」と言われた「日本一小さい農家」は、どうやって稼いでいるのか？

写真：ダイヤモンド・オンライン

　借金、補助金、農薬、肥料、ロス、大農地、高額機械、宣伝費ぜんぶなし！　
しかも、労働力は夫婦2人、初期投資は143万円だけ！　
なのに、年間売上1200万円、所得(利益)600万円も「幸せに稼いでいる」人物が、石川県能美市にいるという。
それを聞いた本紙記者は、初めて北陸新幹線に乗り直行！　東京から金沢まで約2時間半、そこから在来線で30分。そこにそびえ立っていたのは……
ビニールハウス4棟、サッカーコートの半分、通常農家の10分の1の耕地面積=たった30アールしかない「日本一小さい専業農家」で、「菜園生活 風来(ふうらい)」代表の西田栄喜氏(48)。
第1回連載開始とともに大反響！　発売前にもかかわらず、アマゾン、楽天ブックスなどで最新刊が急上昇中だという。
かつてオーストラリア中をオートバイで走っていた西田氏は、元バーテンダー、元ホテル支配人だった。
いま、風来では「怪現象」が起きている。
それは、2000円の野菜セットに送料2800円(沖縄)出す人もいて、野菜セットは「3週間待ち」だというのだ。
日本海を臨む「日本一小さい農家」で、いったい何が起きているのか？　
『農で1200万円！　――「日本一小さい農家」が明かす「脱サラ農業」はじめの一歩』がいよいよ明日9月2日に発売される著者に、「サラリーマンが持っているサービス精神をどう農で活かすか」を聞いた。

●　元バーテン、元ホテルマンの 「脱サラ農家」

　 　私は大学卒業後、サービス業へのあこがれからバーテンダーになり、その後、オーストラリアに1年間遊学しました。
　そして、帰国後、とあるビジネスホテルチェーンの支配人業を務めました。

　バーテンダー時代にサービス業の基礎を、オーストラリアでは日本を離れて客観的に見る目を、そしてホテルマン時代には経理や簿記の技術、マーケティング、ITの技術をそれぞれ得て、それらがすべて今の糧(かて)となっています。

　そういった経験をすべて活かせるのが「小さい農」です。

　農家になろうと最終的に思ったのは、サービス業の視点で見ると、十分ビジネスチャンスがあると計算できたからです。
　サービス業の視点とはつまりお客様目線。

●　川下からの発想が大事

　農産物を販売する農業は、どうしても川上からの目線になりがちですが、そのできあがるものに対して、原材料から育てているんだという川下からの発想が大事です。

　具体的に「風来」の場合は、キムチからスタートしました。

　私の母は、いわゆる近所でも評判のおばさんといった感じで、漬物などをたくさんつくって配ったりしていました。

　中でも日本人の口に合うキムチが評判で、私にとってもソウルフード。

　キムチに合った品種の白菜、にんにくを自分で育て、自家製キムチをつくったわけです。

　キムチの「タレ」から語る漬物屋さんは多くても、キムチを「種」から語れるのは農家だけ……(現在「風来」では、漬物用の野菜は外部委託したもの、近所の農家のものも使用しています)。

　売り方もお客様目線、川下からの目で見ました。

　漬物なら、どのような量なら食べやすいか、手に取りやすいか、野菜セットならどんな野菜が入っていたら、こんだてが立てやすいかなど……。農家の都合を押しつけず、いかにリピーターになってもらえるかを第一に考えました。

　そして今、個人が小さく起農できる状況がそろってきました。