はらぺこサイクルキッチン<68>海外遠征の外食で必要なのは「リサーチ力」と「強いお腹」?!
こんにちは、アスリートフード研究家の池田清子です。
昨年に続いて2回目の参戦となった『モンゴリアバイクチャレンジ』。今年は全6ステージで、夫・池田祐樹(トピーク・エルゴン・レーシングチームUSA)の他に2人の日本人ライダーが参戦しました。「海外のステージレースに挑戦してみたい!」というライダーも増えているはず。そんな方々へ向けて、食事に関する池田祐樹的ポイントをお届けします。
2年連続参戦「モンゴリアバイクチャレンジ」
まず、キッチン付きの宿が選べる際はぜひともそちらをお勧めします。基本的に外食という方も、ちょっとしたものが作れると便利なのです。但し、野菜を洗うのもミネラルウォーターで、という環境の場合は気を使う場面が多々あって、少々大変かもしれません。お湯を沸かすものがあるだけでも味噌を溶いて味噌汁を飲んだり、お湯でふやかす携帯食を食べたりすることができます。これは先進国で特に役に立ちますよ。
お気に入りのレストランを
次に、キッチンが無い宿または基本外食、という方。1日……いえ、一食でも早くお気に入りのレストランを見つけてください。事前にリサーチするもよし、ホテルの方におススメのレストランを聞くのもよし。特にレースまでの数日間、コンディションを整えるということが何よりも大事。“レース前に体調を壊さない”ということおいて、食は非常に重要です。
過去に行ったスリランカ、ネパール、モンゴルなどでレースが始まる前に、現地でお腹を壊すライダーを数多く見てきました。スタートラインに万全の体制で立ちたければ、リスクを犯さず、食を疎かにしないことです。
池田祐樹のリサーチ力は身内ながら、見事なものです。レースのためだけでなく、そもそも本人は食のリサーチが好きでたまらないのですが。今年はアメリカからモンゴルへと飛ぶ際、私は日本へと帰国しましたので、モンゴルでの食事管理は全面的に本人に任せました。
するとモンゴルに到着した直後から「ヴィーガンカフェを見つけたから行ってきた」「ヴィーガンイタリアンを見つけた」「良いスーパーを見つけてオーガニック食品を買った」と嬉しそうなメールが届きました。モンゴルでヴィーガン!?と驚きましたが、そのリサーチ力にさらに驚き。今はインターネットで簡単に見つけられますが、そもそもモンゴルでは難しいだろうなぁという先入観があったので、私では見つけられなかったかもしれません。
ちなみに、店内はモンゴルの若者や欧米人で賑わっていたそうです。日本人ライダーの一人は、以前記事にも登場してくださった岡本紘幸選手(インパルス)。野菜中心の食生活を送る二人は、昼はヴィーガンカフェ、夜は韓国料理屋さんで野菜ビビンバや豆腐の辛味噌スープを食べるのがルーティーンになりました。
大事な「食のルーティーン」
ここで大事なキーワード。そう、“ルーティーン”です。決まったものを食べると栄養が偏るので時にはメニューを変えてもいいのですが、“食のルーティーン”が生活のリズムを整えてくれる働きがあります。レース前夜に初めて行くレストランはおススメしません。
食中毒の可能性の有無が未知数であったり、食事が出てくるタイミングが遅くてレースの準備に支障をきたしたり、はたまた油脂が多くてお腹を壊したりと、いつもより心身ともに気が付かないうちにナーバスになっている体には、細心の注意が必要だからです。先日ご紹介したマスターサイクリストの星、御年83歳のフレッド・シュミッド選手も外食しない理由の一つに、リズムが崩れることを何よりも嫌うとおっしゃっていました。
自炊できない場合はレースが始まる前にお気に入りのレストランを見つけて、食のルーティーンで生活リズムを掴む!池田祐樹が最も大事にしているポイントです。
今大会中、レース後半から腹痛を訴える選手が続出しました。レースが終わってからも更に数名のライダーがバタバタと倒れ、戻ってきた街のホテルで苦しんでいたとか。
日本人3選手はTEAM JAPANとしてチームを組み、チームカテゴリーにもエントリーしていました。上位2選手のタイムが反映されるルールで、初日から2位以下と大きく差をつける首位を独走していましたが、鈴木選手がステージ5で腹痛になり、途中棄権を余儀なくされました。そして最終的に、なんと池田祐樹を含む日本人ライダー全員がお腹を壊すという結果になってしまいました。
ステージレース中は重なる極度の疲労で免疫力が低下し、食事も用意されるものを食べるため、ある意味避けようがないのですが、とにかくレース前にやれることは一つでも多く実行し、気持ち良くスタートラインに立っていただきたいと私も切に願うのです。私はまだ経験がありませんが、海外の腹痛はとても激しい(らしい)ので……!
ちなみに本レースを昨年のテレビ放送、NHK-BS1『グレートレース』でご覧になった方もいらっしゃると思います。今回初参戦した鈴木望さんもそのお一人。そしてこの放送を観ていたく感動し、マウンテンバイクを初めて購入され、今年の参加を決めたそう!中学・高校の理科の先生をされています。素晴らしい決断と行動力。池田祐樹にとっても、嬉しい出来事でした。今後、海外レースがもっと身近になっていくのでないかと思います。今回の食に関するポイントも、みなさんの海外遠征時に少しでもお役に立てれば幸いです。
レースの結果は、池田祐樹は総合4位でした。昨年も4位でしたが、各レースとも表彰台との差も昨年より格段に短く、内容的には成長が見られる結果でした。日々の激闘はレースレポートに記しておりますので、ぜひご覧ください!
アスリートフード研究家。モデル事務所でのマネジャー経験を生かして2013年夏よりトピーク・エルゴンレーシングチームUSA所属ライダー、池田祐樹選手のマネージメントを始め、同年秋に結婚。並行して「アスリートフードマイスター」の資格を取得。アスリートのパフォーマンス向上や減量など、目的に合わせたメニューを日々研究している。ブログ「Sayako’s kitchen」でも情報を発信中。